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2019年1月4日(金)

防衛省 隠す削る

戦争法成立を米軍に約束 発言文書 普通扱い一転 秘密に

仁比質問受け“確認逃れ”

 安倍晋三首相も中谷元防衛相(当時)も口をそろえて「確認できない」と答えていた日本共産党が独自に入手した防衛省の内部文書。ところが防衛省は早い段階で、真実性が高い文書だと判断していたことがわかりました。一連の経過をみていくと、防衛省が“確認逃れ”に汲々(きゅうきゅう)とする姿がみえてきました。


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(写真)防衛省=東京都新宿区市谷本町

 自衛隊トップが法案成立の10カ月も前に戦争法(安保法制)の成立を米軍に約束する―。2015年9月2日に日本共産党の仁比聡平参院議員が明らかにした文書には、河野克俊統合幕僚長の国会軽視というべき発言が記されていました。仁比議員はこう追及しています。

 仁比「総選挙の投票日のわずか2、3日後の訪米です。(戦争)法案の具体的検討も与党協議もしていないはずの時点に、来年夏までに(成立させる)と決まっていたのですか。それとも河野克俊統合幕僚長は勝手に米軍に示したのですか」

 中谷防衛相「防衛省で作成したものか否かも含めてコメントはできない」

 仁比「この文書の存在について確認をしてもらいたい」

 今回の取材で、防衛省は仁比氏の質問翌日の同月3日に省内にある文書と照合していたことがわかりました。省内にあった文書の題名は仁比氏が示したものと誤字まで同じで、「統幕長訪米時の(ママ)おける会談の結果概要について」です。

 もともと、この文書は防衛省内の一般的な業務に使用する端末で作られ、関係部署に配布されたものです。

 現職の幹部自衛官が国を訴えた裁判によると、文書は統合幕僚監部の担当者から13人にメールで送られ、そこからさらに転送されるなどして同省職員73人の業務用パソコンに送られていました。たくさんの職員の目にふれる、“秘密”でもなんでもない文書だったのです。

 ところが防衛省は照合した結果を明らかにするどころか、この文書を照合した同月3日に、文書を“秘密”に格上げ。「省秘」にしていました。

 “秘密”にして、文書の中身を国民の目から隠すことで、仁比氏が示した文書が本物か確認させない狙いがあったと思われます。

 そして同月5日ごろには、この文書を職員の業務端末から削除するよう省内で指示が出されます。

 その後、陸上自衛隊の中央警務隊は、情報本部の大貫修平3等陸佐(44)を自衛隊法違反(秘密漏えい)の容疑で、ウソ発見器などを使った違法な取り調べを行っています。

 その際、大貫さんは「(共産党に)統幕文書を流したのはおまえだろう」などと警務隊から言われています。大貫さんは一貫して、容疑を否定しています。

 その一方で、防衛省は国会で「(仁比氏の)文書が捜査対象になっているかどうかも含めて、お答えは差し控えたい」(17年9月、井上哲士参院議員の質問)と答弁。何を漏えいした容疑で大貫さんを調べているか明らかにすると、仁比氏の文書が“本物”だと認めることになるためか、かたくなに具体的な容疑を明かそうとしません。

 また、大貫さんは「この件は行政府の長も激怒している」「この件は官邸マター(関与の事件)だから捜査に協力しろよ」と警務隊から言われています。

 文書をめぐる不可解な動きの背景に、戦争法成立を急いだ安倍政権の意向がうかがわれます。

■国会質問と文書をめぐる動き

 2015年  

 9月2日 参院特別委で仁比議員が追及

  3日 統幕監部が文書を「省秘」に指定

  同日 会見で河野統合幕僚長が「今、防衛省内で確認中」と発言

  4日 中谷防衛相(当時)が「この資料が防衛省が作成したものか否かも含めまして調査をしている」

  5日ころ 統幕監部から文書を削除するよう連絡を受け、省内で業務パソコンからデータ削除

  7日 防衛省は鴻池祥肇・参院特別委委員長(当時)に、統幕文書は「存在しない」と通知

  11日 安倍首相が参院特別委で「仁比委員が示された資料と同一のものの存在は確認できなかった」

 ※国会答弁と訴状などをもとに作成


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