2018年12月28日(金)
奪われた命の無念を 東電原発刑事裁判
避難し死亡 患者ら遺族代理人陳述
“旧経営陣に責任”
東京電力福島第1原発事故をめぐって、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の第36回公判が27日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれ、被害者遺族の代理人の海渡雄一弁護士らが意見陳述しました。検察官役の指定弁護士が26日の公判で、元会長の勝俣恒久被告(78)、元副社長の武藤栄被告(68)、元副社長の武黒一郎被告(72)3人に求刑した通り禁錮5年の処罰を求めました。3人は無罪を主張しています。
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福島第1原発から約4・5キロ離れた双葉病院(福島県大熊町)と同系列の介護老人保健施設から長時間の避難を余儀なくされ、ケアを受けられず患者ら44人が死亡しました。
そのうち、寝たきりだった入院患者について、代理人弁護士は、カテーテルで栄養管理していればすぐに命が危なくなる状態ではなかったと指摘。「原発事故による極めて過酷な避難によって体力を奪われ、命まで奪われた。原発事故を引き起こした被告人らの責任は極めて重い」と主張。その上で「どれだけつらく苦しかったことか。原発事故を起こした被告人らの責任が明らかにされなければ、被害者らの無念は晴らされない」と訴えました。
代理人弁護士は東電が防潮堤などの津波対策を先送りしようとしていたころ、同じ太平洋側の日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)では盛り土など津波を低減させるなどの津波対策を講じていたと指摘。福島第1原発の津波対策が進まなかった違いについて「被告らの誤った経営判断を明白に裏付けている」と主張し、防潮堤以外に建屋の水密化などの対策を取ることができたとしました。
公判後に記者会見した福島原発刑事訴訟支援団の佐藤和良団長はこれまでの公判を振り返り「今回の刑事裁判がなければ明らかにされなかった事実があり、日本社会の透明性にとって大きな意義がある。裁判所は、厳正な判決を出してほしい」と述べました。
来年3月に弁護側の最終弁論が予定されています。