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2018年12月28日(金)

ビキニ国賠訴訟の国際的意義

高松高裁で来月初弁論

 米国のビキニ水爆実験(1954年)に遭遇した元マグロ漁船員らが、被ばくの事実を長年隠し、必要な治療などを行わなかった日本政府の連続的不法行為の罪を問う「ビキニ国家賠償請求訴訟」。2016年5月の提訴から1年半。原告29人は一審高知地裁判決を不服として高松高裁に控訴。第1回口頭弁論が来年1月22日に行われます。高知地裁判決(7月20日)を振り返りながら、裁判の国際的意義などをみました。

 (阿部活士)


写真

(写真)報告集会で立って発言する山下さん。増本さん(右端)ら原告と梶原弁護士(右から3人目)=7月20日、高知市内

 日本政府はこれまで、ビキニ海域で操業したマグロ船のうち第五福竜丸の乗組員以外は被ばくの事実を認めてきませんでした。高知地裁はその判決で、漁船員の被ばくを1人を除いて認め、漁船員の救済の必要性にも言及しました。

漁船員の救済へ “国会も内閣も”

 元朝日新聞大阪本社編集局長の長谷川千秋さんは、非核の政府を求める京都の会の会報のコラムで、地裁判決の意義を次のように強調しています。

 「ビキニ事件の歴史的経緯、放置された第五福竜丸以外の無数の被災船員らの存在などが、ほとんど原告団提出の証拠と主張通りに事実認定されています。核実験に使用された水爆の方が原爆より遥(はる)かに強力で広範囲に放射性降下物を撒き散らしたことが判明しているのだから、被災船員の健康被害の救済を―との原告らの訴えに理解を示し『長年にわたって省みられることが少なかった漁船員の救済の必要性については改めて検討されるべきとも考えられる』と判示したのです」

 裁判を支援する山下正寿さん(太平洋核被災支援センター事務局長)も、地裁判決の「国会や内閣での救済の努力を期待する」指摘を評価。「被爆者援護法と同じ法律など被災者救済に向けた国会内外での運動を強めたい」と語っています。

核兵器禁止条約 前文で「留意し」

 核兵器禁止条約が2017年に国連で採択されたもと、ビキニ国賠訴訟の国際的な意義も出てきました。

 禁止条約では前文に「核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)および核実験の被害者にもたらされた容認しがたい苦難と損害に留意し」としています。

 山下さんは、「核兵器禁止条約に背をむけている核保有国は、核実験被害の加害国です。日本政府や米国が禁止条約に参加しないのはおかしい。“容認しがたい苦難と損害”を押しつけた責任をどう思うのか」と訴えます。

 アメリカは大気圏核実験を100回も繰り返し、ソ連(現・ロシア)、イギリス、フランス、中国など核保有国の大気圏核実験は合計480回以上にのぼっています。

 高知市に住む下本節子さんは、被災船のひとつ「第七大丸」で通信士だった大黒藤兵衛さんの長女で、国賠訴訟の遺族原告です。父の船員手帳には「雇い止め 昭和35年6月14日 病気の為」とあります。37歳でした。

 下本さんは、同じ通信士で亡くなった第五福竜丸の久保山愛吉さんを連想するといいます。

 「米国は軍事目的の核実験で“死の灰”を浴びせ被ばくさせておいて、肝心の人間は調べないし被ばくの事実さえ隠し続けた。そして、10年後、20年後にじわじわと死んでいく。これは人道上許せない大量殺人です。苦悩した父、核実験で死因もわからずに亡くなった乗組員のためにも、禁止条約を力に米国や日本政府の責任を追及していきたい」と話します。


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