2018年12月11日(火)
NHK日曜討論 小池書記局長の発言
9日のNHK「日曜討論」で日本共産党の小池晃書記局長は、臨時国会で焦点となった改定出入国管理法や憲法改定、日ロ領土交渉、消費税増税などについて各党幹事長らと討論しました。
安倍政権の悪法連発
議会制民主主義の自己否定
冒頭、臨時国会が会期末を迎えるにあたり、改定入管法などの法案審議のあり方が議論されました。
自民党の萩生田光一幹事長代行は「限られた日程の中で一定の結果を出した」と採決強行を正当化し、公明党の斉藤鉄夫幹事長も「充実した審議ができた」と述べました。
これに野党側は、資料提出拒否、審議打ち切り、採決強行の連発は「国会審議を無用だといわんばかりだ」(立憲民主党の福山哲郎幹事長)、「民主主義が崩壊する」(国民民主党の平野博文幹事長)、「議会制民主主義は死んでしまった」(自由党の森ゆうこ幹事長)と厳しく批判しました。
小池氏は、安倍政権による悪法強行の連発は「安倍政権が国民にまともな説明ができなくなっているからだ」と指摘。「議論をすればするほど問題が出てくる」として、首相の外遊日程に合わせて採決したのは「議会制民主主義の自己否定だ」と批判しました。
一方で、失踪外国人技能実習生の約2900人分の聴取票を野党議員が共同で書き写し、政府が当初、最低賃金以下で働く実習生は22人だとしていたが、実際は1927人が最賃未満だったことを明らかにしたとして、「政府が隠したかった情報を野党の連携プレーで明らかにしたのは重要だった。今後も市民と野党の力を合わせたたたかいが必要だ」と強調。「国民と国会を愚弄(ぐろう)する暴挙は許されない。来年の選挙で審判をしっかり下していきたい」と表明しました。
今後の外国人労働者受け入れ拡大の新制度の詳細について、立民・福山氏は、改定法を成立させてから全体像を示すというのは「やり方が逆だ」と批判。小池氏も、政府が実習生の実態調査を制度導入直前の来年3月に公表するとしていることに関し「法案を強行してから実態調査をやるのはあべこべだ」と指摘しました。
そして、「これだけ外国人労働者の実態に注目が集まったことは重要だ。今こそ、この問題を解決すべきだ」と強調。シャープ亀山工場(三重県)で外国人労働者を3000人以上雇い止めした事例に触れ、「政府は外国人労働者の人権を守ることに全力をあげるべきだ。それが日本人の雇用・権利を守ることにつながる。『万国の労働者、団結せよ』という言葉があるが、こういう取り組みを政府が責任をもってまずやるべきだ」と述べました。
技能実習制度に対する野党の批判に対し、自民・萩生田氏も「耳を傾けることがたくさんある」と述べざるを得ませんでした。
改憲案提示
市民と野党の力でストップ
臨時国会で憲法審査会での実質的な改憲論議が行えなかったことについて萩生田氏は「残念だ」と発言。野党側は、自公両党が慣例を破り、与野党の合意なしに会長職権で衆院憲法審を強行開会したのは、「与野党合意でやってきた一線を越えた」(立民・福山氏)などと厳しく批判しました。
小池氏は、安倍首相の狙っていた改憲案提示・発議を「市民と野党の反対でストップさせることができた」とその意義を強調。「国民が望んでもいないときに、権力を握っている政権与党が権力の制約を取り払うために改憲を強引に進めること自体、立憲主義の根本の否定だ。総理や政府に求められているのは、憲法99条の憲法尊重義務をしっかり守ることだ」と指摘し、「憲法を実現する政治を放棄して『改憲』を言い募るのは、それこそ“職場放棄”“思考停止”だ」と批判しました。
萩生田氏は憲法審開会強行について「おわび申し上げたい」と述べ、「リセットして通常国会では各党で活発な議論していただきたい」と改憲論議を進める姿勢を示しました。
日ロ交渉
正々堂々たる外交を
11月の日ロ首脳会談で、日ソ共同宣言(1956年)を基礎として平和条約締結を加速させることで合意したことについて、萩生田氏は「歯舞・色丹の2島を先行返還して、その後平和条約を結び、国後・択捉については継続的に審査をしていく」ものとの認識を示し、「70年間全く動かなかった領土問題の方向性を示したのは評価できる」と発言しました。
小池氏は、「歯舞・色丹は千島ではなく北海道の一部であり、直ちに返還を求めるのは当然だ」とした上で、「萩生田さんは『その後、平和条約(締結)』とおっしゃったが、それをやったら国境線を画定してしまう。絶対にやってはいけない」と強調。国民は政府が従来とってきた「4島一括返還」からの方針転換だと捉えているのに、河野太郎外相が国会で聞かれても一切答えないと指摘し、「平和条約締結まで秘密交渉をやろうという態度で大問題だ。国会での答弁を拒否しているのは、方針の転換を説明できないからだ」と批判しました。
小池氏は、日ロ領土問題の根本は、旧ソ連のスターリンが領土不拡大という戦後処理の大原則を踏みやぶって千島を占領したことにあると述べ、「この戦後処理の不公正をただす交渉をすることが大事だ。正々堂々たる外交を避け、国民の支持を得られないような外交交渉をやれば成功するわけがない」と強調しました。
野党側は、安倍首相や河野外相が「北方四島」が日本の領土に当たるかさえ明言を避け、国民に何も明らかにしないまま「ブラックボックス」で交渉を進めていることに懸念を表明しました。
萩生田氏は、4島返還の立場は変わっていないと弁明しました。
消費税増税
日本経済破滅に導く
最後に、来年から税率10%への引き上げが予定される消費税について議論。萩生田氏は、8%増税時のような景気の腰折れを避けるため、プレミアム商品券やポイント還元などさまざまな政策を総動員すると語りました。
野党からは、プレミアム商品券やポイント還元、「軽減税率」などについて「訳が分からない。そもそも消費税を上げなければいい」(社民党の吉川元幹事長)などの批判が噴出。自公両党以外の全政党が「これ以上国民生活を壊し、日本経済を破滅に導く増税はやめるべきだ」(森氏)、「低所得者に対する配慮が欠けている」(平野氏)とそろって増税中止・凍結を求めました。
小池氏は、ポイント還元やプレミアム商品券は「天下の愚策だ」と批判。藤井聡内閣官房参与が「10%への増税は日本経済を破壊する」と述べていることを紹介し、「唯一の景気対策は増税を中止することだ」と強調しました。
また、消費税増税は「社会保障のため」との主張には、75歳以上の医療費窓口負担を原則2割にすることや、低所得者の保険料軽減の中止、マクロ経済スライドによる年金削減などの今後の狙いをあげて反論しました。
小池氏は「今月で消費税導入から30年になるが、この30年間で消費税の税収が372兆円、一方で法人3税は291兆円減っている。大企業減税の穴埋めにほとんどが使われてきたというのが、消費税30年の歴史だ」と指摘。「増税するならアベノミクスでさんざんもうけた富裕層に負担を求めるべきだ。トランプ大統領のいいなりに米最新鋭戦闘機100機、1兆円を新たに買うようなことこそ見直すべきだ」と語りました。