しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2018年12月9日(日)

入管法改定案 仁比議員の反対討論

参院本会議

写真

(写真)反対討論をする仁比聡平議員=8日午前3時40分ごろ、参院本会議

 本法案は人手不足対策だといいますが、構造的な低賃金の改善をないがしろにして外国人労働者で補えば、困難をさらにひどくします。

 反対理由の第1は、外国人労働者を劣悪な労働条件でも従順に働く単純労働力とし、人権侵害の構造が明らかな外国人技能実習生を、さらに最大5年、安価に働かせ続けるものだからです。受け入れを検討している14業種の多くで実習生からの移行が80~100%になる見込みです。山下貴司法相は「法改正が半年遅れれば万単位の方々が帰ってしまう」と、来年3月に実習を終える人たちを、新在留資格「特定技能1」に移行させたい本音をむき出しにしました。

 急増する実習生の失踪について、政府が「意欲が低くより高い賃金を求めて失踪する者が多数」と一部の身勝手かのようにねじ曲げ、ねつ造してきたことは重大です。失踪が7089人に上った17年に政府が聴取した2870人の個票を、野党が結束して分析した結果、最低賃金違反は、政府のいう22人どころか1927人・67%、過労死ラインを超える人は10%に上りました。政府が個票の提出を拒むのは、「制度全体はうまくいっている」「だから修了者を特定技能1へ」という法案の根本が覆るからです。

 安倍晋三首相をはじめ政府は、6日も「実習生の9割はうまくいっている」「失踪者は全体から見ればわずか」だと答弁。失踪や自殺、過労死や労災事故、暴行や性暴力など、一人ひとりへの人権侵害を脇におくことは、民主主義社会の政府として絶対に許されません。実習生の失踪は氷山の一角です。

 第2は、新在留資格の外国人労働者の地位は極めて不安定で、就職や解雇、住まいなどあらゆる場面で、悪質なブローカーの介入の危険があるからです。技能実習を修了しても日本語がおぼつかない人はたくさんいます。厳しい就職差別のなか、適正な受け入れ企業を自力で見つけて就職・転職することは事実上困難です。法案は、受け入れ企業が支援するとしますが、支援を委託される登録支援機関には、技能実習制度の監理団体が横滑りでき、登録を受けない団体が営利目的で委託料をうけて支援するのも認められることが明らかになりました。支援の名で、狭い宿舎に労働者を押し込め、高額の家賃や水光熱費をピンハネする類いの不正行為を排除できず、労働者供給事業の温床にされかねません。

 第3は、外国人労働者を雇用の調整弁にするものだからです。新在留資格は1年ごとの更新。雇用契約は基本的に1年以下、3カ月の短期契約も可能です。派遣も認めるのか法文には規定がなく、政府が決めるといいます。技能実習と違い、国内労働者比率基準がないため、日本人社長1人、特定技能1が100人の派遣会社もありうることになります。「受け入れ見込み」を判断する「客観的指標」も法文に規定がありません。

 この討論時間では指摘しきれない重大問題の数々を政府に白紙委任することは断じて許されません。財界要求をうけ、安倍首相・官邸主導で「来年4月開始ありき」で押し進め、国会議員でありながら採決マシーンとなって強行するなら、自公議員への国民の信頼は地に落ちるでしょう。市民と野党の本気の共闘を必ず実らせ、安倍政権を打倒する決意です。


pageup