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2018年12月1日(土)

派遣大手パソナ

まだあった脱法的手法

派遣先断れば解雇の危険

 派遣会社大手パソナでは、派遣先が1カ月なければ事実上の解雇になる規定は削除されたものの、紹介された派遣先に労働者が不満をいえば解雇・雇い止めの恐れがある通知をしていることが分かりました。派遣労働者から「就業できない派遣先を紹介され、拒否すれば雇い止めにされるのではないか」と不安の声があがっています。(田代正則)

 安倍政権の下、竹中平蔵パソナグループ会長が旗振り役となって改悪された派遣法では、派遣先は職場単位で3年の派遣可能期間を延長できる一方、派遣会社には派遣労働者に次の派遣先を提供するなどの「雇用安定措置」が義務付けられました。

 ところが、パソナが派遣労働者に渡している「『雇用安定措置』の概要と当社の対応」という文書には、「ご案内をした新たな派遣先での業務をお断りになられた場合は、労働者派遣法における雇用安定措置は終了となります」と記述されています。

 本紙は、パソナに対して、紹介する派遣先は1件だけなのか、提示した派遣先がマッチングしなければさらに探すのかなどの対応を問い合わせました。パソナは「できる限り就業先の確保を図る」というだけで、解雇・雇い止めにすることを否定しませんでした。

 またパソナは「『お断り』の状況とは、派遣労働者の方の事情によって当該派遣先で就業されなかった場合」だと答えており、派遣労働者の自己都合退職扱いになりかねません。

 「安倍政権がなければ、3年で使い捨てにされることはなかった」。パソナから派遣されている女性は悔しさを打ち明けます。

正社員化を拒否

 派遣開始から間もなく3年になるため、女性は派遣先への直接雇用を希望しました。同じ部署の正社員や上司も、「ぜひ働き続けてほしい」と会社に働きかけました。ところが、この派遣先では「例外なく派遣社員は3年で終了」と言われました。すでに引き継ぎの新しい派遣労働者が送り込まれています。

 女性は専門資格を複数所持して働いており、安倍政権が派遣法を改悪した15年9月以前なら、「専門業務派遣」として扱われ、派遣期間の制限がなく、派遣先が同業務に新たに労働者を募集する際には優先的に採用される権利がありました。

 改悪派遣法では、派遣労働者は原則3年で入れ替えとなり、派遣会社に課せられた雇用安定措置は派遣先へ直接雇用を「依頼」するだけなど実効性がありません。

 女性は「女性は年齢を重ねると正社員として採用してくれない。派遣社員としても最長3年しか働けない。この国は本当におかしい。夢も希望もありません」と訴えます。

 女性にはパソナから通勤交通費が出ていません。現状でも電車を乗り継ぎ、時給100円分は交通費で消えます。パソナが新たに紹介する派遣先は、通勤時間が「片道1時間30分まで」となっており、長時間通勤でさらに交通費がかさむ恐れがあります。

 女性は3年のあいだに徐々に時給アップしてきましたが、紹介先の労働条件は変更の可能性があると記載されており、「また時給が一からやり直しになるのでしょうか」と話します。

直接雇用義務に

 非正規労働者の権利実現全国会議事務局長の村田浩治弁護士は「派遣会社が、意図的に新たな派遣先を紹介しなければ、雇用安定措置の義務違反といえます。しかし、紹介先の有無は、労働者には不明なので立証が難しい。問題は派遣先に雇用義務がないことです」と指摘。「常用代替防止の原則を守るためには、3年以上仕事が継続するのなら直接雇用にすべきです」と強調します。

 日本共産党国会議員団の申し入れで厚労省が作成した「Q&A」では、「新たな派遣先での就業条件が派遣で働く方の能力、経験等に照らして合理的なものでないと適切な雇用安定措置とは認められません」と指摘しています。党国会議員団は、派遣先、派遣会社が違法脱法行為を行わないよう指導徹底を求めています。

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