2018年11月28日(水)
主張
「入管法」ごり押し
論拠の崩れた法案を力ずくか
データ偽装を図ったことに反省もなく、論拠が総崩れになった法案の衆院通過を数の力で押し通す―。外国人労働者の受け入れ拡大のための出入国管理法改定案をごり押しする安倍晋三政権の姿勢は、まさに言語道断です。審議の中では、外国人労働者の人権を侵害する働かせ方が次々と明らかになり、改定案がその深刻な実態に歯止めをかけるどころか、過酷労働にいっそう拍車をかける危険性が浮き彫りになっています。法案強行を許さず、徹底審議できっぱり廃案にすることが求められます。
人権侵害の実態置き去り
今国会成立ありきと期限を決めて、改定案の審議を強権的にすすめる安倍政権のやり方には一片の道理もありません。
なにより重大なのは、現在、人権侵害などが大問題になっている外国人技能実習制度などの抜本的見直しに手を付けようとせず、むしろ温存・拡大することを法案の土台にしていることです。
改定案では、外国人労働者の新たな在留資格「特定技能」を設けるなどとしています。安倍政権は、新たな資格と技能実習制度は“別物”と主張します。しかし、政府が示した14業種の受け入れ見込み人数のうち、約6割が技能実習生からの移行であることが明らかになりました。技能実習生を100%あてにしているのは5業種もありました。“別物”どころか、技能実習生を抜きに新制度が成り立たないことは明らかです。
悪質なのは、外国人実習生が置かれている過酷な実態をごまかすために、失踪した技能実習生の法務省の聞き取り調査データを偽装し、あたかも実習生がわがままで逃げ出したかのように描き出す資料を提出したことです。野党議員の追及によって偽装が明らかになりました。政府の説明とは大きく異なり、最低賃金以下で働かされていた劣悪な実態などが横行していたのです。事実をねじ曲げた責任は極めて重大であり、技能実習制度を正当化する政府の論拠は崩壊しています。
人権侵害などの異常な実態をたださず、受け入れ拡大を先行させることは、違法・無法状態をまん延させることにしかなりません。
しかも、今回聞き取り対象になった失踪実習生は全体からみれば「氷山の一角」です。来日する際に多額の借金を背負わされ、雇い主に逆らえば強制帰国させられるなどの構造的問題から声を上げられない実習生は多数いると指摘されています。技能実習生だけでなく、アルバイトが制限されている外国人留学生の違法な働かせ方も大きな問題になっています。
この間、外国人労働者の受け入れをなし崩し的に広げ続け、雇用の調整弁として「使い捨て」にしてきた日本の受け入れ政策が根本から問われています。そのゆがみを放置し、「人手不足」だからと拡大ありきで進めることは、将来に重大な禍根を残します。
暴走政治にストップを
外国人の人権と労働環境は、日本国民にも深く関連します。わずかな審議時間で衆院を通過させるような法案ではありません。首相の外遊日程に合わせて審議を打ち切るなど論外です。どのマスメディアの世論調査も今国会での成立反対が多数です。民意に逆らう安倍政権の暴走にストップをかけることがいよいよ重要です。