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2018年11月24日(土)

「最低生活費以下」の世帯割合 「減少」のカラクリは

安倍政権がすすめた生活保護基準引き下げ

 安倍政権が生活保護基準を引き下げたことで、見かけ上、「最低生活費以下で暮らす世帯」の割合が減少していることが23日までに分かりました。中でも母子世帯は減少率が顕著。日本共産党の田村智子参院議員の要求に応じて、厚生労働省が推計した生活保護基準未満の低所得世帯数から明らかになりました。

 (岩井亜紀)


図

捕捉率なお低く

 推計は、国民生活基礎調査のデータをもとに行われました。

 総数でみると、最低生活費以下の世帯割合は、13年に15・9%だったものが、16年には14・1%と落ち込みます。母子世帯では、13年は85・5%、16年では65・5%です。(表)

 「最低生活費」は生活保護基準によって決まります。保護基準の引き下げにより、国民生活全体が底上げされたわけではありませんが、最低生活費以下で暮らす世帯が総世帯数に占める割合が減少したかっこうです。

 安倍政権は2013年8月から15年4月にかけて、生活保護基準を段階的に引き下げました。その根拠にしたのは、全国消費実態調査。保護世帯の消費支出額が一般低所得世帯(全世帯のうち収入が低い方から10%の世帯)の消費支出額を上回っているというものです。

 生活保護(公的扶助)を必要とする世帯のうち実際に利用している世帯割合(捕捉率)が2~3割にとどまる中、低所得層との比較での切り下げは際限なく続いてしまいます。

 同政権は今年10月から20年にかけ、さらに最大5%の削減を予定しています。

 今回の厚労省推計から、捕捉率の変化も明らかになりました。

 13年は19・6%、16年は22・6%。母子世帯に限ってみると、13年が18・6%で16年は23・7%でした。

 花園大学の吉永純教授(公的扶助論)は「生活保護の捕捉率が16年は若干割合が上がったとはいえ、依然2割余りという低い水準であることが明らかになりました」と指摘します。

 13年8月から段階的に生活保護基準が下げられたことで、「以前の基準なら利用できた世帯が利用できなくなっているなど生活保護の対象範囲が狭まっており、“捕捉率が上がった”と単純に評価できません」と述べます。

 低い捕捉率の原因は何か。

 吉永さんは「日本の生活保護が諸外国と異なり、保護開始時の預貯金や、自動車の保有を基本的に認めないなど厳しい制限があるうえ、あまりに広い扶養義務、制度の周知に消極的な国・自治体の姿勢が背景にある」と指摘します。

 そのうえで、「生活保護制度が、生活困窮者を救済するという本来の役割を発揮できていません。その改善は喫緊の課題です」と強調します。


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