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2018年11月6日(火)

シリーズ 許すな「派遣切り」再来

ソニー仙台 ライン“一時停止” 熟練者を切り捨て

 ソニー仙台テクノロジーセンター(仙台TEC、宮城県多賀城市)で「派遣切り」の再来が危惧されています。先端技術を投入している製造現場で、会社が「一時的」(本紙への回答)だというライン停止で、経験ある派遣労働者を切り捨てれば、技術力を維持できなくなるとの声があがっています。(田代正則)


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(写真)ソニー仙台テクノロジーセンター=宮城県多賀城市

派遣法改悪で再び増加 ■ 技術継承困難に

 仙台TECの主力製品の磁気テープは東日本大震災後、災害に強い記録装置として売り上げを伸ばし、復興の象徴となっています。年々、技術革新で記録できるデータ量が増えています。

 磁気塗料を製造する部署は、社外秘の技術も多く、機器の扱いを覚えるだけでも1カ月は要します。

直接雇用を拒否

 正社員と派遣労働者がほぼ同数でそれぞれ35人程度。派遣労働者は、別企業で正社員の就職先をみつけるなど退職する人もおり、恒常的に入れ替わりがあります。新人が入るたび仕事を教え直す負担が重く、正社員からも「長く働き続けてほしい」という声があがっていました。

 ところが、ソニーは経験を積んだ派遣労働者を直接雇用しません。仙台TECで9月末までだった職場単位の派遣可能期間を、3年延長する手続きが行われました。

 改悪派遣法には抜け穴があり、派遣労働者を派遣会社の正社員(無期雇用派遣)にすれば、ソニーは派遣のまま労働者を使い続け、いつでも雇用責任を取らずに派遣契約を打ち切れる仕組みです。

 ある派遣会社の労働者は、「無期雇用派遣になったが、今までより月収が3万~4万円下がった」と言います。別の派遣会社の労働者は、「もうすぐソニーで3年を迎えるのに、何の打診もない」と不安を口にしました。

 その矢先の10月前半、製造ライン停止や稼働率低下が起こり、派遣労働者は軽い清掃作業などを指示されました。正社員に聞いても、不具合があるようだというだけで、今後の見通しも分かりません。11月からは派遣契約打ち切りや自宅待機が相次いでいます。

 ある派遣労働者は「無期雇用派遣になれば、60歳まで働けると言われていたのに、今後の説明がない」と訴えます。

一時派遣ゼロに

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 ソニー労組仙台支部の松田隆明委員長は、「労働者をコストとしかみない経営姿勢は、働く尊厳を傷つけ、技術の継承にも成長にも弊害をもたらす」と批判します。

 組合は、派遣労働者の正社員化を求めてたたかってきました。

 2009年の「派遣切り」の際、派遣労働者が組合に加入し、派遣可能期間を超えて働かされていたことを宮城労働局へ申告し、是正指導を勝ち取りました。仙台TECで「派遣切り」が止まり、派遣労働者が直接雇用の期間社員に転換。一時期、派遣がゼロになりました。

 11年の東日本大震災を口実にした期間社員の大量雇い止めともたたかい、期間社員を関連会社の正社員にするか、無期限で就職あっせんすることを約束させました。

 ところが、安倍政権が派遣法改悪案を国会提出すると、14年5月に派遣受け入れが再開されました。組合の推計では、改悪派遣法施行の15年9月には40人程度になり、今年9月には213人に達し、全体の2割、製造現場の3割以上が派遣労働者です。10月も216人でした。

 さらに17年、正社員の賃下げのために磁気テープの研究開発部門と製造部門に会社を分割しました。組合は、新技術の製造現場投入がうまくいかなくなると批判。まさに今回、ライン停止が起こりました。

雇用守れる体力

 ソニーが10月30日に発表した中間決算は、営業利益が4345億円で過去最高。組合の試算で内部留保は3兆5069億円で、3月期決算から3408億円も積み増しています。

 組合は、ソニーには雇用を守る体力が十分にあると指摘し、労働者を大切にして一丸となって開発・製造を行うよう訴えています。


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