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2018年10月29日(月)

主張

医学部入試の調査

女性差別を根絶する姿勢示せ

 東京医科大で発覚した女子受験生らに対する入試差別をきっかけに、文部科学省が全国の医学部を対象に実施している「入試の公正確保」をめぐる緊急調査の中間まとめが発表されました。東京医科大以外の複数の大学でも「不適切である可能性の高い事案」などがあったと認定したものの、大学の名前の公表は避けました。女性差別は憲法の定める平等原則に反する重大な行為です。事実が明らかになった大学には厳正対処こそ必要なのに、腰が引けていると言わざるをえません。入試の女性差別根絶へ向けて、文科省は毅然(きぜん)かつ真剣な対応をとるべきです。

不適切な大学を明かさず

 緊急調査は、東京医科大入試で女子や3浪以上の受験生が得点操作などで不当な扱いを受け不合格になった問題が判明したため、8月から81大学に聞き取りなどを行っているものです。

 23日発表の中間まとめでは、(1)出願書類審査などで現役と浪人回数の多い人と差をつけた(2)同点数でも年齢や性別で扱いに差を設けた(3)合格圏外でも同窓生の子どもを合格させた―などの「不適切」事案が複数大学であったとしました。しかし、具体的な実例の記載はありません。問題があった大学名は明かさず、大学に「自らが公表」し、不利益を受けた受験生らへの対応を求めただけでした。

 監督官庁としてあまりに無責任な姿勢です。入学者選抜は、学校教育法に基づく文科省令の大学設置基準で「公正かつ妥当な方法」で行うことなどを定めています。それに照らしても、認定された「不適切」事案はいずれも法令違反であり厳しく対処すべきものです。

 なにより中間まとめで問題なのは、女性だからという「性別」で差別的処遇をする異常事態がまかり通ったことへの深刻な認識と反省が欠けていることです。女子の合格率が男子に比べ不自然に低い医学部が多いことは、文科省調査でも確認されています。しかし、中間まとめは、男女の合格率の差が異常に開いている大学でどのような入試実態になっているかなどの根本的な問題には迫っていません。これでは徹底した真相解明も再発防止もできません。

 文科省が、女子への得点調整が募集要項などであらかじめ説明されていないから「不適切」としているのは問題の矮小(わいしょう)化です。女性差別は、憲法や教育基本法の平等原則、国連の女性差別撤廃条約に真っ向から逆らう重大問題です。募集要項で示せばいいと合理化することは絶対に認められません。

 東京医科大では一般入試で本来合格していた女子55人が得点操作などで不合格だったことが、同大学の調査で判明するなど被害の大きさは浮き彫りになっています。他の大学でも実態調査と原因究明を進め、被害者の救済や補償に踏み出すことが急務です。

医療現場の構造にメスを

 医学部入試の女性差別は、女性医師が働き続けることが難しい現場の構造的問題とも結びついています。現場の困難を理由に入試差別を正当化することは許されませんが、長時間労働などで医師が疲弊し、職場を去らなければならない現状の打開は不可欠です。

 医療現場における男女共同参画の推進、医師の過酷な労働環境の改善、女性医師支援の抜本的な強化をはかることが重要です。


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