2018年9月29日(土)
強制不妊 賠償求め一斉に提訴
聴覚障害者で初
神戸地裁
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旧優生保護法によって本人の同意なしに不妊手術を強いられたのは障害者差別であり人権侵害だとして、兵庫県の聴覚障害を持つ夫婦2組が国家賠償を求め28日、神戸地裁に提訴しました。聴覚障害者による提訴は全国で初めてです。
提訴後の会見で、優生保護法兵庫弁護団の藤原精吾団長は裁判の意義について、(1)本人の同意なしに不妊手術を受けさせられ何十年も苦しみが続いていることへの謝罪と補償(2)補償を義務づける法律を作らせる(3)優生思想を社会からなくし、障害を持つことで差別を受ける社会を変える―を強調しました。
弁護団の種谷有希子事務局長は、憲法違反の優生保護法に基づいて不妊手術、中絶手術を受けることを余儀なくされたことを指摘し、裁判で国の責任を追及していくことを示しました。
原告の小林寳二さん(86)は、双方の両親が話し合って妻に中絶と不妊手術を受けさせられたことを知り、苦しみ続けてきたことや、差別を許さない思いを語りました。妻の喜美子さん(86)は、子どもを産み育てたかった願いと自分の意志が伝えられずに手術され、苦しみ続けていることを語りました。
高尾さん(仮名)夫妻は、障害者に不妊手術を強いる差別を告発し、差別のない社会に変えたいと訴えました。
県内では3人目
仙台地裁
旧優生保護法の下で、「遺伝性精神薄弱」を理由に強制不妊手術を受けさせ、同法廃止後も国は救済措置を怠ったとして宮城県内の60代の女性が28日、国に謝罪と補償を求める訴訟を仙台地方裁判所に起こしました。宮城県で3人目です。
提訴後の記者会見で新里宏二弁護団長は、原告は1977年、当時20代で不妊手術を受けさせられたことが、県が開示した被手術者名簿に記載されていたと報告。当時、市役所の職員が両親に「障害年金を受給するためには手術を受けるしかない」と、うその説明で説得していたことも明らかにしました。
滝沢圭弁護士が原告の妹のコメントを代読し、「経済的余裕がないことを分かっていて年金を手術の条件に出してくるなんて、悔しい気持ちになった」「私と姉の心の中にあったもやもやが晴れる時が来てうれしい」と紹介しました。
会見の席で、第1次提訴の原告の姉は「妹より5年も後に、こんな説明で不妊手術。信じられない。県に怒りを感じる」と発言。2次提訴の原告の女性は、「提訴になってよかった。1人でも多く名乗り出てほしい」と話しました。
新里弁護士は「きょう、兵庫で4人、大阪で1人提訴している」と述べ、被害者の救済制度に対する全国弁護団の声明を発表しました。