2018年9月27日(木)
すばる 視界に“暗雲”
経費年々削減
宇宙の成り立ちや進化の謎の解明に挑み、1999年の観測開始以来、世界に誇る数々の成果をあげてきた国立天文台の「すばる望遠鏡」(米ハワイ島、口径8・2メートル)。天文学における重要性にもかかわらず、運転経費は年々削減され、視界に“暗雲”が立ち込めています。
すばるに搭載された装置「ハイパー・シュプリーム・カム」(HSC)は、高さ3メートル、重さ3トン、8・7億画素の巨大なデジタルカメラ。満月9個分の超広視野を生かし、ハッブル宇宙望遠鏡なら1000年以上かかる観測を6年で完遂し、全天の約30分の1の領域の暗黒物質の立体地図をつくる計画です。
計画を主導する東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の村山斉機構長は、2020年代に始動予定の30メートル望遠鏡などと連携した新たな天文学への夢を語りつつ、「今後20年間は、すばるがなければ進まない」と指摘します。
ところが、当初は年間30億円以上あった運転経費は、約10億円にまで年々削減され、観測の継続が危ぶまれる状況です。このままでは「宇宙の運命が決まる前に、すばるの運命が決まる」と村山さんは心配します。
安倍晋三政権は、こうした基礎科学には冷たい一方で、陸上配備型ミサイル迎撃システム(総額6000億円超)や武器などに応用可能な技術研究への資金制度(100億円)を推進しています。戦争につながる研究開発ではなく、知の探究や生活向上のための科学政策への転換が求められています。(中村秀生)