2018年9月27日(木)
宇宙 1400億年は存続
すばる望遠鏡 暗黒物質を精密測定
研究チーム発表
宇宙の膨張が加速を続けても、少なくとも今後1400億年の間に終焉(しゅうえん)を迎えることはない―。東京大学、国立天文台、米プリンストン大学などの研究チームが26日、すばる望遠鏡を使った観測成果を発表しました。1000万個の銀河の形状を精密測定した成果。研究チームは「すばる発の精密宇宙論の幕開けだ」としています。
銀河や銀河団などの宇宙の構造は、物質が暗黒物質の重力に引かれることで形成・進化してきたと考えられています。一方、暗黒エネルギーには、この構造を引き裂こうとする効果があります。
研究チームは今回、遠方の銀河と観測者の間に強い重力をもつ物質があると、銀河の形が重力によってゆがんで見える「重力レンズ効果」を利用し、統計的な手法で暗黒物質の立体地図を作製。暗黒物質の分布のデコボコの大きさの時間進化を調べました。これを宇宙進化のシミュレーションと比較して、宇宙の構造の進化の度合いを世界最高レベルの精度で測定することに成功しました。
その結果、構造進化の度合いが、宇宙初期の光(宇宙背景放射)の観測による標準的な宇宙モデルと比べてやや小さいことが示されました。暗黒エネルギーは定数なのか、時間とともに変化するのかは大きな謎となっていますが、時間変化の兆候はみえませんでした。他の観測と組み合わせた結果から、宇宙が今後1400億年間に素粒子までバラバラに引き裂かれる「ビッグリップ」を起こすことはないと判明しました。
今回の発表は、計画全体の11%の観測データでの解析結果。数億個の銀河の観測で、さらに精密な測定をします。担当した東大カブリ数物連携宇宙研究機構の日影千秋特任助教は「従来の宇宙モデルが本当に正しいのか、暗黒エネルギーの素性が何なのかつきとめたい」と話しています。
暗黒物質・暗黒エネルギー 最新の宇宙モデルによると、宇宙を構成するのは、星や惑星などをつくる普通の物質(4.9%)、重力の作用はあるが光で直接観測できない暗黒物質(26.8%)、宇宙の加速膨張の原動力とされる暗黒エネルギー(68.3%)です。
暗黒物質の正体は不明ですが、未知の素粒子という考えが有力です。誕生直後の宇宙は、のっぺらぼうのように均一でしたが、暗黒物質の濃い部分に物質が集まって星や銀河などが形成されたと考えられています。
暗黒エネルギーは、空間が広がると染み出てくるという不思議な存在です。その性質によって、宇宙が永遠に膨張するか、バラバラに引き裂かれて終焉を迎えるのか―宇宙の未来の運命を握っていると考えられています。