2018年8月26日(日)
きょうの潮流
夏といえば怪談話。ゾッとして暑さを忘れるため、というのは俗説だそうです。夏の「お盆」は死者の霊魂が帰るとされる時期。幽霊は歌舞伎の演目にもなり、そこから怪談の季節になったといわれます▼この夏、「カメラを止めるな!」という映画が注目されています。ゾンビの映画を撮影していると、本物がそこに。ありがちな筋立ては伏線だった…。名もないスタッフや俳優が低予算でつくりましたが、口コミがひろがり全国上映にまで▼死者が人間を襲う。噛(か)まれれば感染し、増え続け、何度でもよみがえる。いまや世にあふれているゾンビを定義づけたのは50年前に米国で公開された「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」。監督のジョージ・A・ロメロはゾンビ映画の父と呼ばれました▼無名の若者たちによる自主映画は大ヒット。観客はみなスクリーンに向かって叫んでいたと当時の関係者が特集番組で証言しています。公民権運動やベトナム戦争で全米が揺れていた時代。映画には若者の怒りや葛藤が織り込まれていました▼10年後、ロメロはゾンビ映画の続編を。舞台はショッピングモール。実社会では工場が次々と閉鎖され、労働者は路頭に迷っていました。ところが街にはモノがあふれ、偽りの繁栄が。物欲にかられた人びとをゾンビに例えました▼人間性を失った存在を描くことで人間らしさを追い求める。そういえば、理不尽さがもとになった怪談話も多い。ロメロは生前語っていました。「ゾンビとは、われわれ自身だ」