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2018年8月18日(土)

主張

日本での米兵犯罪

起訴率2割未満は異常すぎる

 2017年の1年間に日本国内で発生した米軍関係者(米兵、軍属、それらの家族)による一般刑法犯の起訴率が約17%にとどまり、8割超が不起訴処分になっていることが、日本平和委員会が法務省への情報公開請求で入手した資料で分かりました。全国の一般刑法犯の起訴率約38%(16年)の半分以下という異常さです。米軍関係者による犯罪が後を絶たない背景となっている不当な特権的扱いは直ちにやめるべきです。

裁判権放棄の「密約」今も

 法務省が開示したのは「平成29年分合衆国軍隊構成員等犯罪事件人員調」と題する統計資料です。平和委員会が今月上旬発表しました。それによると、17年の米軍関係者による一般刑法犯(刑法犯全体から自動車による過失致死傷などを除く)は、起訴15件に対して不起訴が72件にも上っています。

 重大なのは、「強制わいせつ」(4件)「強制性交等」(3件)「住居侵入」(8件)「暴行」(2件)「横領」(2件)「毀棄(きき)・隠匿」(5件)で全て不起訴になっていることです。「窃盗」も32件中30件が不起訴です。一般刑法犯ではない「自動車による過失致死傷」でも169件中145件が不起訴となっており、起訴率は約14%にすぎません。

 日本人などと比べ米軍関係者の起訴率が極めて低くなっているのは、日米地位協定17条に関する「密約」があるからです。

 地位協定は、日米安保条約に基づく在日米軍の法的地位などを定めています。17条は刑事裁判権について規定し、米兵や軍属の「公務外」での犯罪は日本側に第1次裁判権があるとしています。ところが、日本政府は同規定に関し「日本国にとって実質的に重要であると考えられる事件以外」については米兵、軍属、家族に対し「第1次の権利を行使する意図を通常有しない」と米政府に秘密裏に約束していました(1953年)。日本側の第1次裁判権の大部分を放棄する「密約」に他なりません。

 日米両政府は2011年、この「密約」文書をようやく公表します。その際、文書に記録されているのは日本側の「一方的な政策的発言」であり、日米間の合意ではなかったと、「密約」だったことを否定しました。その上で、現在の犯罪については米軍関係者とそれ以外の場合で起訴・不起訴の判断に差はないと主張しています。

 しかし、米軍関係者による犯罪の極めて低い起訴率は、裁判権放棄の「密約」が今も効力を持っていることを明瞭に示しています。ごまかしは通用しません。

 日米地位協定17条をめぐっては、「公務中」の米兵や軍属が起こした犯罪の場合は、そもそも第1次裁判権は日本側になく、米側にあるという問題もあります。平和委員会が入手した統計資料によると、「自動車による過失致死傷」で日本に第1次裁判権のあった169件とは別に、「公務中」に起きたものが46件あり、全て不起訴になっています。

地位協定の抜本的改定を

 米軍関係者に対する特権的な扱いは、性犯罪をはじめとする重大犯罪が繰り返される要因になっています。「密約」を廃棄し、米軍関係者もその他の被疑者と同じ扱いをすべきなのは当然です。同時に、米軍に「治外法権」とも言うべき特権を保証している日米地位協定の抜本的な改定が不可欠です。


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