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2018年8月9日(木)

主張

東京医大・差別入試

不正を生んだ闇 まだまだ深い

 文部科学省をめぐる汚職事件を契機に、入試で女性の合格者数を抑え込む不当な操作などが発覚した東京医科大学の内部調査委員会が、数々の不正が行われていたことを認定する報告書を公表しました。報告書は、文科省前局長の息子らを合格させるための加点とともに、女性受験生や浪人回数の多い受験生が不利になる減点が常態化していたことなどを指摘、「大学の自殺行為に近い」と批判しました。しかし、疑惑の全体像はまだ解明の途上です。不正が野放しにされ、女性への差別がまかり通った構造的問題を徹底的に明らかにし、再発防止をはかるべきです。

得点操作は長年にわたる

 公正な選抜方法が求められる入試が長年ゆがめられ、前理事長や前学長らの一部によって恣意(しい)的に合否が決められていた―東京医科大の不正をめぐる報告書は、同大学で横行していた異常な実態の一端を浮き彫りにしました。女性受験生や3浪以上の男性受験生に不利に働く得点操作を行う一方で、卒業生らの子どもに対しては、加点を行って合格に近づくように下駄をはかせていたのです。

 しかも「合格者の調整」は前理事長が入試委員会委員だった1996年ごろ以降に行われ、女性受験生らを差別する操作は少なくとも2006年から始まっていたことも確認されました。女性を中心にどれだけ多くの受験生が不利益を被り、人生の選択を変えなければならなかったのか。その被害はあまりに甚大です。前理事長ら不正に手を染めた関係者の罪は極めて重いものがあります。

 前理事長らは不正入学させた見返りに大学への寄付金や個人的謝礼を受けたとされています。文科省前局長の息子の場合も、文科省から同大学への補助金を獲得するための贈収賄にあたる可能性が高いと調査委は判断しています。大学を私物化し、入試や行政をねじ曲げた一部の人物の責任とともに、それを許してきた大学の体質そのものも厳しく問われます。

 女性受験生や3浪以上の受験生の合格者数を減らすための差別的操作は、偏見にもとづいた、受験生に対する背信行為というほかありません。女性数の抑制の理由について前理事長らは、女性は医師になっても結婚や出産で辞める、長時間勤務ができないことなどを挙げたといいますが、時代逆行の発想です。医療現場の過酷な労働環境は、女性医師の養成を妨げる口実には全くなりません。誰もが働き続けられる職場に改善することこそが求められます。

 深刻なのは、東京医科大に限らず、医学部全体の女性の合格率が男性より低い傾向があり、「女性受験生の抑制はほかにもある」という声が相次いでいることです。文科省は、全国の国公私立大の医学部を対象に入試の公正さを調査するとしています。実態を早急に把握するとともに、差別の根を断つための取り組みが不可欠です。

問われる文科省の姿勢

 一連の問題発覚の発端となった文科省汚職は広がりを見せており、徹底究明は急務です。不正入試という同医科大の「悪(あ)しき『伝統』」(報告書)に文科省幹部らがどう関わったのか。林芳正文科相の監督責任はあいまいにできません。

 東京医科大疑惑をはじめ医学部入試の“闇”にメスを入れることが必要となっています。


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