2018年6月24日(日)
主張
カジノ実施法案
無益で危険なたくらみやめよ
刑法が禁じる民間賭博を解禁するカジノ実施法案を安倍晋三政権と自民、公明、維新が衆院を強行通過させ、延長した国会での成立を狙っています。各種世論調査では、今国会での同法成立に反対する声が7割を占めます。国民の声を聞き、無益で危険なカジノ解禁は断念すべきです。
首相の浅薄な思い込み
安倍首相は2014年5月、シンガポールのIR(カジノを中核とする統合型リゾート)を視察し、「日本の成長戦略の目玉になる」と発言しました。首相は1日の衆院内閣委員会でも、この視察で「IRのイメージが大きく変わった」「大変な国際競争力を有する異次元のリゾート施設になっていることを知った」と強調しました。シンガポールをお手本にIRをつくれば「世界中から観光客に来ていただける」(安倍首相)というのが言い分です。これは浅薄な思い込みでしかありません。
シンガポールのカジノ施設開業は2010年です。シンガポールを訪れた海外からの観光客数は、カジノ開業前の09年の968万人が16年には1640万人と169%に増えています。
日本はどうか。同じ09年の678万人が16年には2403万人と354%に伸びました。「カジノの無い日本」は、シンガポールをはるかに上回る伸び率で外国から観光客を迎え入れるようになっており、17年には2869万人と史上最高を更新しました。
観光庁の調査では、訪日外国人観光客が感じている日本の魅力は、日本食、ショッピング、温泉入浴や四季の体感などです。日本ならではの豊かな自然や文化が魅力の源泉であり、実際、地域の観光資源、魅力に磨きをかけることで、多くの外国人観光客を受け入れ、地域の活性化に結び付けることに成功している事例も、日本中で生まれています。国際観光振興というなら、そうした地道な動きを支援することこそが必要なのです。「巨大なカジノ施設さえつくれば」という安直な発想は、根本的な誤りであり、無益です。
だいたい日本進出を狙っている米ラスベガスなどの海外カジノ資本は、日本のカジノ客の8~9割は日本人だと試算しています。カジノの標的は日本人です。
日本共産党の藤野保史衆院議員の調査で、超党派の国会議員でつくるカジノ議連が11年に法務省と交わしたやりとりの詳細が分かりました。カジノ議連はそこで「カジノ賭博とは、本来射幸性(ギャンブル性)の高い賭博行為であり、かつ、その射幸性のあり方は顧客の自己責任による賭け金行動に依存する」とのべています。
これはカジノの実態をよく知る推進派だからこそ言える言葉で、人の射幸心を強く刺激し、のめり込むのも自己責任だという、カジノの「異質な危険性」をあけすけに認めたものです。
参院で廃案に追い込む
カジノ上陸は、ギャンブル依存症の拡大、多重債務問題の再燃、組織暴力の介入、治安悪化、子どもたちへの悪影響など計り知れないほどの災いと不幸を、日本の社会に広げる危険性があります。
カジノ実施法成立を推し進める安倍政権と与党などの姿勢は許されません。安倍政権を追い詰め、参院で廃案に追い込む、国民的なたたかいを広げるときです。