2018年5月29日(火)
「働き方」法案強行採決許されない
まともな答弁なく データは虚偽次々
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「働き方改革」一括法案は29日にも衆院本会議での採決強行が狙われています。しかし、法案の「出発点」となった労働時間データに虚偽が次々と見つかり、まともな答弁もできないままで採決など許されません。
労働時間データは、労働時間法制の審議がスタートした2013年9月27日の労働政策審議会で、厚労省が「議論の出発点」と重要性を強調したものです。
同データをもとに、裁量労働制の「平均の者」と一般労働者の「最長の者」を比較するなど、恣意(しい)的にねつ造していたことが発覚。調査票にも、裁量労働制の1日の労働時間が「1時間以下」など実態に反する記録が続出し、裁量労働制の事業所データはすべて撤回になりました。
再集計で根拠覆る
一般労働者にも、1日の労働時間が24時間を超えるなどの矛盾が見つかり、データの2割が削除になりました。強行採決された25日当日の衆院厚労委員会でも、同一の調査票を二重に集計していたことが6件確認され、疑惑はとどまるところを知りません。
さらに再集計された数値にも、従来の政府の説明を覆す重大な実態が判明しています。
「三六協定」で一般労働者の残業時間を年1000時間超と決めた事業所で、実際に1000時間を超えている割合が、旧データの3・9%から48・5%に激増しました。
この集計は、日本共産党の志位和夫委員長が2015年2月の衆院予算委員会で、「過労死ライン」を超える残業協定を「異常と思わないか」と追及した際、安倍首相が「実際はこんなに残業しておらず、念のために結んでいる」と答弁した根拠となったものです。再集計で覆りました。
研究開発業務では、残業時間が大臣告示(月45時間、年360時間)を超えている事業所が、3割から5割に急増しました。法案で研究開発は、残業時間の上限を適用除外にしており、高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)の対象にもなるものです。こんなデータでまともな審議はできません。
答弁不能 開き直り
日本共産党の高橋千鶴子議員は25日の衆院厚労委員会で、「長時間労働の業務を、残業代がない、時間規制がない高プロに入れていいのか」と批判。政策決定に直接かかわる問題だとして、労働政策審議会へ差し戻すべきだと強調しました。
野党の追及に対し、加藤勝信厚労相は、「法案は変わらない」「再精査は考えていない」と開き直ることしかできず、田畑裕明厚労政務官は「私も今確認をしているところだが」などとまともに答弁できなくなりました。それにもかかわらず高鳥修一委員長は「既に質疑時間が経過した」と強制的に質疑を打ち切りました。審議が尽くされないまま強行採決されたことは明らかです。
「議論の出発点」がでたらめな法案を衆院本会議で採決を強行すれば、国会の存在意義が問われます。法案は撤回し、再調査のうえ労政審に差し戻させることこそ、国会がやるべきことです。
(田代正則)