2018年5月28日(月)
財務省・森友記録 “新たなゴミ”対応
「首相夫人」再三登場
学園側の交渉カードに
財務省が公開した学校法人「森友学園」との交渉記録から、学園が新たなごみの対応を財務省に迫るなかで繰り返し安倍晋三首相の妻昭恵氏の名前を持ち出していたことが分かりました。この後、財務省は、新たなごみの存在を確認しないまま約8・2億円の値引きに応じていました。(原千拓、三浦誠)
|
8.2億円値引きその後に決定
森友学園が、小学校予定地で新たなごみが発見されたと近畿財務局に報告したのは、2016年3月11日。学園理事長だった籠池泰典被告=詐欺罪で起訴=は以後、近畿財務局などに対応を強く求め続けます。
わざわざ記録
その際、繰り返し出したのが、当時学園の小学校で名誉校長に就任していた昭恵氏の名前でした。同14日には財務局と国土交通省大阪航空局に、「6月には棟上げ式を行う予定であり、内閣総理大臣夫人も来ることになっている(略)工期が遅れたら大変なことになる」と強調しました。
同15日には財務省の田村嘉啓国有財産審理室長らと籠池被告が面談。棟上げ式に「安倍総理夫人も出席されることで調整しているところであり、重大な問題として考えている」とのべ、「早く対応しろ」と言い放ちます。
同30日にも、籠池被告は財務局、航空局に「棟上げ式には首相夫人を招待するスケジュールを組んでいる」と再び主張。「これができなければ私は切腹する覚悟」と迫りました。「私人」である昭恵氏の動向をわざわざ公文書に記録していたことで、財務局がこの問題を重視していたことが分かります。
ここで財務局、航空局は「国が何もしないとして立ち止まるわけにはいかない」と対応を約束。事態はこの後、急展開します。
“口裏合わせ”
同年4月5日に、学園の弁護士らと財務局、航空局が協議します。この場で、新たなごみがある深さや量について、学園側は、「深度3メートル程度からごみ等が含まれている層は確認されている。ただその層がどこまでかは確認できていないし、写真・資料など残していない」と明言。ごみがある深さや量は分からない、というのです。
そのうえで、ごみはどの範囲まで存在するかという質問に、学園側の弁護士が「どの範囲との特定はできない。ただし、9メートルまでの範囲では出てきている旨を提出資料に付記したい」と回答しました。
同日の会合については日本共産党の宮本岳志衆院議員が、交渉を録音した音声データを示し国会で追及してきました。音声データでは、学園側が「3メートル下からはそんなにたくさん(ごみが)出ていない」と否定。他方、国側は「言い方としては混在と。9メートルまでの範囲で」と、9メートルまでごみがあるよう誘導しました。宮本氏は「大幅値引きの口裏あわせの動かぬ証拠だ」と指摘していました。
結局、財務局は新たなごみの存在を確認せぬまま約8・2億円の値引きを決め、売却契約を結びました。
籠池被告が昭恵氏の名前を繰り返し持ち出して対応を求めた後に、国側の主導で“口裏合わせ”をして、格安売却契約を結んだ形です。籠池被告は国会の証人喚問で国有地格安売却について「神風が吹いた」と証言していました。