2018年5月20日(日)
主張
核兵器廃絶の焦点
禁止条約を力に世論を今こそ
核兵器禁止条約が昨年7月に採択され10カ月余り―。条約に署名した国は58カ国、批准は10カ国となりました。条約発効には50カ国の批准が必要です。歴史的な条約の成立を力に、どのように「核兵器のない世界」へと前進するのかが、改めて問われています。
新たな前進と逆流の中で
スイスのジュネーブで2020年核不拡散条約(NPT)再検討会議の第2回準備委員会(4月23日~5月4日)が開かれ、昨年の国連総会に続き、核兵器禁止条約が焦点の一つとなりました。
核保有国は「禁止条約は、核兵器の削減や制限に役立たず、NPTに反する」などと強く反対したのに対し、条約を推進してきた国々は「禁止条約はNPTの核軍縮措置を補完・強化するものだ」と主張しました。NPT第6条は、全ての締約国に「核軍備の縮小・撤廃に関する効果的な措置」について「誠実に交渉を行う」義務を課しています。禁止条約はNPT再検討会議の議論にも、大きな影響を及ぼしていくでしょう。
核兵器の脅威を取り除くのは、「核抑止力」ではなく、世論と外交の力であることも鮮明となりつつあります。朝鮮半島の非核化にむけて6月12日には、初の米朝首脳会談が行われる予定です。軍縮分野でも禁止条約の成立後、注目される動きがあります。国連事務総長は5月中にも新たな核軍縮の提案を行う予定です。ジュネーブ軍縮会議も20年ぶりに核軍縮の交渉が再開されようとしています。
しかし、米ロが核兵器使用政策の強化と新型核兵器の開発を競うなど新たな危険も生まれています。両大国の利害も絡み、中東でも軍事的緊張が高まっており、核軍縮交渉の進展は楽観できません。
こうした情勢を前向きに打開する決め手は、諸国民の世論と運動です。とりわけ重要なのは、核保有国の逆流に厳しく反対するとともに、禁止条約成立によって始まっている積極的な動きと共同して、大きな世論を築くことです。
この点で、市民社会の役割がいっそう大きくなっていることが、浮き彫りになっています。ジュネーブの準備委員会で演説した被爆者の児玉三智子さん(日本被団協事務局次長)の訴えには、核保有国の代表らも「『核兵器のない世界』という目標は同じだ。核兵器は使ってはならない」と言わざるをえませんでした。核兵器の非人道性を告発し、その廃絶を訴える被爆者と市民の声こそ、「核抑止力」論を打ち破る最大の力です。
全ての国に核兵器を禁止し、廃絶にいたるまでの条約締結を求めている「ヒバクシャ国際署名」を、核保有国やその同盟国を含め、国際的に発展させていくことが、ますます重要となっています。
被爆国の国際的な責務
河野太郎外相は「被爆国として核兵器の非人道性を知る我が国は核廃絶に向け国際社会の取り組みを先導する責務がある」と準備委員会で演説しました。核兵器の非人道性を認めることと、その使用を前提にした「核の傘」に依存することは両立しません。禁止条約に背を向けていては、世界を「先導する責務」は果たせません。
条約に署名・批准する政府をつくることこそ、被爆国の国際的責務です。8月の原水爆禁止世界大会へむけた国民平和大行進など、世論と運動の発展が急務です。