2018年5月15日(火)
究明に背 不誠実な答弁連発
首相「ウミ出し切る」というが
安倍晋三首相は14日の衆参両院の予算委員会で、「加計学園」疑惑に関連して、「ウミを出し切り、組織を立て直していく」などと述べながら、野党側が提案した調査を次々拒否し、疑惑解明に後ろ向きで不誠実な答弁に終始しました。
知事の喚問拒む
2015年4月2日の面会での愛媛県や今治市の担当者の同席について、柳瀬唯夫元首相秘書官は10日の参考人質疑で「記憶がない」と“否定”しましたが、同県職員が作成した面会記録が出てきたのに加え、中村時広同県知事も柳瀬氏の名刺を示して反論しています。
14日の衆院予算委で国民民主党の玉木雄一郎共同代表は、中村知事を国会に招致し事実関係を明らかにさせるため自民党総裁として与党に指示するよう求めましたが、安倍首相は「多数決で与党が呼びたい人をどんどん喚問で呼べるが、それはしませんよと(いうことにしている)。人権もある」と問題をすり替えて拒否しました。
獣医学部新設について加計学園が有利となったことへの自身の関与についての疑惑に対し、安倍首相は「承服できない」「いつどこで私が指示したのか(証拠を)示していただかなければならない」と“反論”しました。また、加計学園しか獣医学部新設ができないように行政がゆがめられた疑惑が問われているのに、「(獣医学部の志望者は)20倍近い倍率になっていた」「こういう若い人たちの希望をふさいで、認可するかどうか自体を門前払いしていた行政のあり方自体をただした」と問題の核心をすり替え。「加計ありき」で行政をゆがめた実態を「改革」だったなどと強弁しました。
問題をすり替え
さらに、面会について柳瀬氏と県側の主張の食い違いをただされても、「(柳瀬氏は)名刺を渡していないとはまったくいっていない」「言葉の印象というのは、それぞれ受け取り方も違う」と、またもや“印象”の問題にすり替えました。
安倍首相は、公明党の中野洋昌氏からの「本当に柳瀬氏から報告を受けていなかったのか」との質問に対し、「秘書官は日々、多くの来客を受けている」ことを根拠に「秘書官への来客についてまで私が報告を受けることはない」と否定しました。
しかし、立憲民主党の本多平直氏から、「首相秘書官になって外の話が聞けなくなった」という柳瀬氏の参考人質疑での説明との矛盾を突かれると、今度は「他省庁の役人同士の来客も『来客』という場合もある」と奇妙な言い訳に終始。首相秘書官が事業者や自治体の課長クラスと会った異常さについて追及されると、「あまり大きな意味がないと思う」と述べました。
立憲民主党の川内博史氏は、問題の面会での農林水産、文部科学両省の出席者や記録の有無についての再調査を要求しましたが、安倍首相は「(調査の)指示をして、すでに答えさせていただいている」として拒否。国家戦略特区ワーキンググループの八田達夫座長が10日の参考人質疑で「規制改革のプロセスに一点の曇りもない」と述べたことだけを根拠に、行政がゆがめられたとの指摘を否定しました。
官僚に責任転嫁
一方、参院予算委では、加計疑惑にからみ官僚側からの「忖度」(そんたく)が働いたのではないかとの自民党の塚田一郎氏の質問に、安倍首相は「忖度がなかったとは言い切ることはできない」と答弁。自身の関与については、これまで「証拠」を示せといって否定してきましたが、官僚側の「忖度」には疑惑の余地を残し、官僚に責任を転嫁する姿勢を示しました。
この日、政権の傲慢(ごうまん)で不誠実な姿勢が表れたのは、安倍首相の答弁だけではありません。麻生太郎副総理兼財務相は玉木氏の質問中、「自分でしゃべりたいんだよ、この人は」などとやじを飛ばし、野党側の抗議で質疑が一時中断する一幕もありました。