2018年5月12日(土)
きょうの潮流
「トランプ大統領にノーベル平和賞を」。朝鮮半島の非核化や朝鮮戦争終結に道を開いたとして、米議会の一部でそのような声が上がっています。イラン核合意からの離脱など中東での横暴ぶりを見ると首をかしげてしまいますが、興味深い動きではあります▼昨年までは戦争一歩手前に見えた米朝が、歴史的な対話に転じた要因は何か。安倍晋三首相は「日米をはじめとした国際社会が最大限の圧力をかけてきた成果だ」と言いますが、事実に反します▼まず、米国自身が北朝鮮の核問題に関して、「圧力一辺倒」ではなく、対話による平和的解決も並行して模索していました。加えて、戦争回避のため米朝両国に働きかけてきた韓国の懸命の外交努力が実を結んだといえます。その間、安倍政権は「蚊帳の外」に置かれていたのです▼そうした実態がさらけだされたのが、9日に開かれた日中韓首脳会談でした。中韓両国は非核化と経済支援を段階的に進める立場を示します。これは、日本を含む6カ国協議で確認された「行動対行動」の原則に沿った常識的な立場です▼これに対して安倍首相は、「核実験場や大陸間弾道ミサイルの廃棄だけで対価を与えるな」と圧力最優先の立場に固執し、「非核化」の手順をめぐって3カ国の間に深刻な溝を生み出してしまいました▼興味深いのは、中韓両国がそろって「日朝対話」を求めたことです。こうした声が出ること自体、日本が北朝鮮をめぐる外交の流れにいかに取り残されているかを証明しています。