2018年5月4日(金)
主張
米軍機事故の頻発
横暴勝手許す危険は一層明白
マティス米国防長官が4月下旬、米軍機の事故による兵員の死者が過去5年間で133人にも上っていることを議会証言し、波紋を広げています。日本でも米軍機の墜落など重大事故やトラブルが頻発し、国民の命と安全を脅かしています。事故原因の徹底究明、米軍機の飛行停止を含めた緊急総点検が不可欠であると同時に、米軍の横暴勝手な活動を許す日米地位協定の抜本改定が緊急に必要であることを改めて示しています。
過去5年で133人死亡
マティス長官は4月25日の米下院歳出委員会国防小委員会(非公開会合)に提出した準備書面での証言で「(陸・海・空軍、海兵隊の)各軍にわたる最近の航空機事故は、5年間で兵員133人の死亡を伴う悲劇的で厄介な問題だ。最近4週間だけでも16人の兵員が死亡した」と指摘しました。
さらに、これらの事故は「17年間に及ぶ戦争や予算の削減、不安定な財政によって(米軍の)即応性が低下・悪化したことを示す悲劇的な現象」だとし、トランプ政権下での国防費増額でも目に見える改善には時間がかかると述べました。アフガニスタンやイラクでの戦争などで装備の劣化や兵員の疲弊が深刻な事態に陥っていることを浮き彫りにする証言です。
日本でも米軍機の事故・トラブルは4月も続発しました。
▽10日、米空軍横田基地(東京都)で米兵がC130輸送機から降下訓練中、パラシュートが近くの中学校に落下▽18日、米海兵隊普天間基地(沖縄県)所属のAH1Z攻撃ヘリとUH1Y多用途ヘリが熊本空港(熊本県)に緊急着陸▽24日、米海兵隊岩国基地(山口県)所属の最新鋭ステルス戦闘機F35Bが航空自衛隊築城基地(福岡県)に緊急着陸▽25日、普天間基地所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ2機が奄美空港(鹿児島県)に緊急着陸
奄美空港には昨年6月にも普天間基地所属のオスプレイ1機が緊急着陸しました。同機は約2カ月後、オーストラリア沖で揚陸艦への着艦に失敗して水面に激突、海兵隊員3人が死亡しています。
それだけではありません。米空軍三沢基地(青森県)所属のF16戦闘機の操縦席からとみられる低空飛行の映像が4月2日付で動画サイトに投稿され、大問題になっています。動画には民家すれすれに飛行したり、岩手県の風力発電所の風車の間を通り抜けたりする様子が映っています。
三沢基地のF16部隊(第35戦闘航空団)は所属パイロットによる飛行訓練の映像であり、500フィート(約150メートル)以下で飛んだところもあったと認めています。日本の航空法が定める最低安全高度(非人口密集地域で150メートル)を下回る危険極まりない訓練は到底許されません。
地位協定容認の安倍政権
日米地位協定に基づく航空法特例法は、米軍に最低安全高度の順守やパラシュート降下の原則禁止など航空法の規定の適用除外を定めています。同法特例法の廃止を含め地位協定の抜本的な改定は待ったなしです。
地位協定改定を提起しないばかりか、米軍機が事故を起こしても原因不明のまま飛行再開を追認し、低空飛行にもまともな抗議すらしない安倍晋三政権の姿勢が厳しく問われます。