2018年4月29日(日)
きょうの潮流
「朝鮮半島の平和のためなら、私は何でもする」。1年前の就任式。自分の確固たる信念を国民に向けて訴えたのが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領でした▼朝鮮戦争のさなか、文氏の両親は北朝鮮から命からがら脱出。祖父母を北に残したまま、異郷の地で貧しい生活を送りました。早くから社会意識に目覚めて民主化運動に身を投じ、人権派弁護士として活躍。その後、政界に入ります▼変革を求める市民によって誕生した文大統領は「君臨して統治する大統領ではなく、対話してわかりあう大統領になる」と。北朝鮮をめぐって緊張が高まるなかでも「すべてをかけて戦争だけは防ぐ」という決意を示し続けました▼平和を大きく前進させる画期となった「板門店宣言」。世界も歓迎の声をあげています。トランプ米大統領は「歴史的な会談。勇気づけられた」。ロシアや中国も「とても前向き」「政治決断と勇気を称賛する」と評価しています▼そのなかで、内外から“蚊帳の外”とみられているのが日本政府です。ただ強気の姿勢をアピールしたいがための圧力一辺倒の姿勢はいまや破たん。外から傍観しているだけでは、あまりにも情けない。安倍首相にはこの地域に平和をもたらす覚悟と外交戦略がないのか▼道を開いた南北首脳会談。対話と信頼を粘りづよくつみ重ね、互いに約束したことを一つずつ実行していく。そこには困難や紆余(うよ)曲折もあるでしょう。しかし、やり遂げようとする信念があるかぎり、それは力となって歴史を動かします。