2018年4月29日(日)
主張
南北首脳会談
非核化と平和体制構築へ前進
11年ぶり3回目となる南北首脳会談は、初めて韓国で行われ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」に署名しました。一対一を含む長時間の会談と、(1)南北関係の改善と発展(2)軍事的緊張の緩和と脅威の解消(3)「完全な非核化」を含む恒久的な平和体制に向けた協力―からなる宣言は、新しい時代へ向かう両者の意気込みを示しました。具体化と実行が強く望まれます。
敵対関係の解消めざす
南北両首脳は宣言で「核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認」しました。北朝鮮は3月以降、韓国の特使、中国の習近平国家主席、米国の特使に対して非核化の姿勢を示してきましたが、韓国との合意文書でそのことを明記し、北朝鮮国内でも報道したことは重要です。
「朝鮮半島の非核化」の内容や検証方法、期限などは直接の言及がなく、北朝鮮と米国の交渉にゆだねられた形です。韓国も「目標を具体的にどう実現させていくか、方法は簡単ではない」「その部分は究極的には米朝間の合意が必要」(19日、文大統領)としています。近く行われる見通しのトランプ大統領と金委員長による初の米朝首脳会談の成功がカギです。
板門店宣言は、敵対関係の米朝が、韓国、また中国とともに、65年間停戦状態のままの朝鮮戦争を、今年中に終戦させ平和協定への転換をめざすと表明しました。北朝鮮は、核・ミサイル開発を、米国の軍事的脅威への「抑止力」だとして正当化してきました。その口実を消し、非核化を進めるうえでも、平和協定は不可欠です。
南北首脳は、「朝鮮半島の非核化のための国際社会の支持と協力のために積極的に努力する」と確認しました。各国もこの決意にこたえる必要があります。
朝鮮半島をめぐる情勢のこうした方向への変化は、北東アジアの安全保障に大きな影響を与えます。安保法制=戦争法や9条改憲の企ての口実とされてきた「北朝鮮脅威」論も、沖縄をはじめとした在日米軍基地の問題も、あらためて問われることになるでしょう。
日本共産党は、2014年の党大会で「北東アジア平和協力構想」を提唱した際、この地域の関係諸国に対し、軍事的抑止力に依存した安全保障からの脱却、軍拡から軍縮への転換などをめざし、対話と協力を促進するよう呼びかけました。朝鮮半島の新しい流れは、北東アジアの平和の地域共同体づくりの出発点となる可能性をはらんでいます。
今こそ日本政府は、従来の対話否定・圧力一辺倒の立場を根本からあらため、外交戦略を確立し、対話による北朝鮮問題の解決に真剣に取り組むべきです。
歴史的な動きに貢献を
安倍晋三首相は、南北首脳会談前、拉致問題を取り上げるよう要請しましたが、この問題は、国際的な協力をえつつ、日朝両政府の交渉で解決すべき問題です。日朝平壌宣言(02年)と、米・韓・中・朝・日・ロの6カ国協議の共同声明(05年)に基づき、核・ミサイル、拉致、植民地支配の清算など諸懸案を包括的に解決し、日朝の国交正常化をめざすことが求められています。それは、この地域の平和体制構築への歴史的な動きに貢献する道です。