2018年4月17日(火)
自衛隊イラク日報
「戦場」の真実 解明ほど遠く
防衛省は16日、陸上自衛隊イラク派兵部隊の「日報」435日分、約1万5000ページを公表しました。
この中には、陸上自衛隊が活動していたイラク南部サマワで「戦闘が拡大」との文言が明記されています。戦後初めての「戦地」派兵と、海外派兵を禁じた憲法9条との整合性を図るため、イラク特措法では「非戦闘地域」で活動することとされており、明らかに矛盾します。
名古屋高裁は2008年4月の判決で、武装米兵の空輸を行った空自の活動は「他国の武力行使との一体化」に該当し、憲法9条1項に違反すると判断する一方、「サマワだけがイラク全土の中で例外的に非戦闘地域だった根拠はどこにもない」とも述べています。サマワで「戦闘が拡大」という認識が示された以上、憲法9条との整合性が鋭く問われることになります。
当時の小泉純一郎首相は「自衛隊が活動する地域が非戦闘地域」だと答弁していましたが、自衛隊が活動していたサマワで「戦闘」が発生していた以上、過去の答弁との関係について、現政権は説明する必要があります。
イラク派兵検証を
ただ、今回公表された日報は、約5年におよぶイラク派兵の断片的な事実にしかすぎません。公表された日報も核心部分は黒塗りされており、「戦場」の真実が明らかになったとは言い難いものです。
自民党の一部からは、「他国は日報を公表することはない」として、むしろ非公表にすべきとの議論も出ています。しかし、米国や英国、オランダなどイラク派兵を行った主要国は政府や議会が検証委員会を設け、膨大な事実に基づいた検証結果を公表しています。米国は04年、開戦時にイラクに大量破壊兵器が存在しなかったとの報告書をまとめ、参戦した英国も150人以上を聴取し6千ページ以上の報告書を7年かけて作成、「参戦は失敗」と結論付けました。
これに対して日本は、まともな検証を行わず、いまだにイラク派兵の誤りを認めていません。こうした姿勢が、今回の日報など、派兵の実態を積極的に公表せず、それどころか隠ぺいにつながっていると言えます。政府は可能な限り事実を公表し、これを機にイラク派兵の検証に踏み切るべきです。(竹下岳)
イラク派兵と日報をめぐる経緯
イラク戦争~派兵
2003年3月 イラク戦争開戦(日本時間)
7月 イラク特措法成立
12月 空自がクウェートに部隊派兵
04年1月 陸自がサマワに部隊派兵
06年7月 陸自がサマワから撤収
8月 空自が武装米兵らなどの空輸開始
08年4月 名古屋高裁が空自の活動に違憲判決
12月 空自の活動が終了
日報の隠蔽
17年2月 稲田防衛相が「存在しないことを確認」と答弁
3月 陸自研究本部で保管を確認
陸自研本が情報公開請求に対して「保管せず」と回答
18年1月 研本が陸幕総務課に保管の事実を報告
4月 防衛省がイラク日報の一部を公表