しんぶん赤旗

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2018年4月16日(月)

政治考

異常国会 地方も怒り

“強い反自民の空気”

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(写真)安倍政権の退陣を求めて抗議のコールをあげる人たち=14日、国会正門前

 「もうぐちゃぐちゃだ。政治の体をなしていない」。自民党の閣僚経験者の一人は、歴史上かつてない異常国会に身を置いてうなだれました。

 国会に提出された公文書の改ざん、自衛隊のイラク「日報」隠ぺい、裁量労働制データのねつ造、虚偽答弁など、議会制民主主義の根幹を壊す大問題が一挙に噴出。10日には「加計学園」の獣医学部新設をめぐって柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月に「本件は、首相案件」と愛媛県や今治市の職員に指摘していた面会記録の存在が明らかになりました。

 元閣僚は「柳瀬氏が県・市の職員と会っていたなら、そのこと自体が問題だ。自分の大臣時代の経験からいっても、秘書官が大臣の意向と無関係に単独で人と面会することはないし、そもそも秘書官が面会することは基本的にない」と断言。首相秘書官の面会は首相の意向を示すという見方です。

 柳瀬氏が「記憶の限りでは、会っていない」と逃げていることについても、「『会っていない』ともいわず、まともに答えていない。総理を守るために、うそをついていると心証を持たれるのは当然だ」と言います。

公明党から不満

 与党の危機感は地方にも広がっています。自民党関係者の一人は「来年の統一地方選に向かって動き出している中で、政局のあおりを食っている。公明党の内部からも不満が強く、財務相の辞任論が出ている」と述べます。

 8日に投開票された京都府知事選。日本共産党も加わる「民主府政の会」と幅広い市民が共同した「つなぐ京都」の福山和人候補が自民、公明、民進、希望、立憲民主各党の相乗り候補を激しく追い上げました。昨年の総選挙の得票でみると「8対2」の力関係が、得票率で56%対44%となりました。自民党関係者は「昨年の東京都議選では、政権への批判が都議選に流れ込み、自民党は58議席から23議席への大惨敗となった。仮に京都で野党が共闘していたら、負けていたかもしれない」と深刻な受け止めを漏らします。東北地方の自民県議は「このまま参院選挙をやれば大負けする。強い『反自民』の空気が流れている」と危機感を強めます。

5万人の大歓声

 「これは安倍政権を倒す署名ですか?」

 安倍9条改憲阻止の3000万人署名の取り組みに、各地でこんな声がかかっています。「憲法と民主主義を踏みにじる政権に改憲させていいのですか」と問いかけると、自民党支持の人も相次いで賛同を寄せるなど、積極的反応が広がっています。

 14日に開かれた安倍政権打倒の国会前行動には5万人の市民が参加。日本共産党、立憲民主党、社民党の代表もあいさつし、志位和夫共産党委員長が「市民と野党の共闘の力で安倍政権を倒そう」と訴えると、大歓声が起こりました。

「安倍首相である限り決着しない」

 続出する問題に対して国会が真相解明に役割を果たさなければならないにもかかわらず、「もううんざりだ」(二階俊博幹事長)という与党の対応は鈍く、関係者の喚問や十分な集中審議の日程が定まりません。日本共産党、立憲民主党、希望の党、民進党、自由党、社民党の野党6党は結束して真相究明の徹底審議を求めています。

 安倍政権が、今国会の目玉法案とする「働き方改革」一括法案の審議入りのめどが立たない中、元閣僚は「改ざんや隠ぺいの噴出で、野党から法案審議の前提が崩れていると言われても仕方ない。会期延長が難しければ、法案は通らないが、(首相の)責任問題になる」と指摘。「国民が『政治とはこんなものだ』と全く信用しなくなれば、法治国家の秩序が崩壊しかねない」とため息を漏らします。

信頼回復見えず

 ある自民党の地方県議は「政治が全く前に進まない。疑惑解明をあまりにも長引かせた。役人まで大規模に巻き込まれ国会にうそをつくなど国家構造の根本が壊れ、立て直せるのか、どうかしろと言われてもすぐに答えられない」と困惑します。「世界は大きく動いており、北朝鮮をめぐっても歴史的な状況なのに政治が信頼を失い、政権担当能力を問われる状況だ」

 政務官を務める若手国会議員の一人は「いま『忖度(そんたく)などなしに全部報告をあげてくれ』と役人との信頼回復に取り組んでいるが、次から次へと新しい問題で振り回され、どうにもならない」と憔悴(しょうすい)した表情を見せます。

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(写真)安倍政権退陣へ向けて団結ガンバロウをする野党国会議員ら=13日、衆院第1議員会館

 まさに政治の崩壊です。憲法と民主主義の原則を踏みにじった安倍政治が、実態を隠すために文書改ざん、隠ぺいに手を染め、その矛盾が噴出して、さらに欺瞞(ぎまん)を繰り返し、底知れない混乱になっています。

 別の元閣僚は「時間がたてば国民は忘れるという人もいるが、この問題はそんなに軽くない。安倍首相である限り決着しないのだから、解散がなければ来年の参院選は相当厳しくなる」と指摘。「安倍首相が解散での決着を狙えば、なぜ首相の尻拭いをさせられるのかと党内から猛反発が出る」と語ります。

改憲には執念も

 前出の東北地方の自民党県議も「安倍首相が辞めないかぎり、次から次へと出てくる流れは止まらない。もっと大きい爆弾が落ちるかもしれない。袋小路だ」と述べます。自民党参院議員の一人も「首相官邸に責任があるのは当たり前だ。どこかで辞めるしかない。安倍首相はやりたいのだろうが、党内は『憲法改正』なんて雰囲気ではまったくない」と突き放します。

 自民党憲法改正推進本部の幹部の一人は「もう少し様子を見ないとわからないが、憲法審査会の早急な開催は難しい」とこぼします。細田博之同本部長は共同通信のインタビューで、改憲発議の時期について「白紙」と述べ、国会での改憲論議の見通しが立たないことを認めています。

 それでも自民党の萩生田光一幹事長代行(日本会議議連)は「いまこの目の前にあるチャンスを逃せば、また来年やりなおししようじゃないかという話にはならない」(3月30日、BSフジ)と改憲に執念を見せています。

 疑惑の中心に安倍首相がいると誰もが認識する中、安倍首相が延命に悪あがきするほど、政治の危機は深まっていきます。

(秋山豊、中祖寅一)


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