しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年4月15日(日)

主張

米英仏、シリア攻撃

事態の解決に逆行する暴挙

 アメリカ、イギリス、フランスの3国は13日(日本時間14日)、シリア政府軍がダマスカス近郊で化学兵器を使用したと断定して、シリアの研究開発施設や軍事施設を対象に軍事攻撃を行いました。

 無差別な大量殺りく兵器である化学兵器の使用は誰によるものであれ、人道と国際法に反する許されない行為です。しかし、国際社会による事実の確認もなく、国連安保理の決議もない国際法違反の攻撃は、問題の解決につながらず、複雑化したシリア内戦をさらに悪化させ、中東地域の平和と安定に逆行する暴挙です。

真相究明を困難に

 アメリカは昨年4月にも単独でシリアの化学兵器使用を口実に軍事攻撃を行いましたが、緊張を激化させるだけでした。今回の作戦は、巡航ミサイルによる攻撃のほか米空軍B1爆撃機、英・仏の戦闘機の参加も報じられています。

 シリアは化学兵器禁止条約の加盟国であり、同条約に基づいて活動する化学兵器禁止機関(OPCW)が、シリアでの化学兵器使用の調査を14日に始める予定でした。シリア政府は昨年10月にも、化学兵器使用を国連とOPCWの合同調査チームに指摘されています。シリア政府は事実を隠すことなく真相究明に全面協力することが求められています。

 米英仏が、調査より軍事攻撃を先行させることは、こうした真相究明を難しくするものです。

 アメリカとロシアは国連安保理でそれぞれ独立調査機関の設置を提案しながら、互いに実現を阻んできました。国際社会として協力し真相究明と化学兵器の全廃に力を尽くすべきです。

 トランプ米大統領が、一方的な軍事力の行使をあたかも当然のようにみなしていることは、同氏の「アメリカ第一」の危険性を改めて浮き彫りにしました。攻撃前に、「ロシアよ、準備しておけ。ミサイルが行くぞ」などと脅しを繰り返したことは、軍事行動が大国を巻き込んだ紛争にまで発展しかねない重大な可能性をもてあそぶものです。軍事力行使へ自制のきかない人物が米大統領の任にあることは、強い懸念を呼んでいます。

 7年におよぶ悲惨なシリア内戦は、ロシアとイランがシリア政府、アメリカがクルド人勢力、欧米とトルコやサウジアラビアが反政府武装勢力を支援し、さらにアルカイダ系のテロ組織が流入し入り混じるなど、外部勢力の介入により国際紛争化し、複雑化しています。

 「この紛争に軍事的解決はありません」(グテレス国連事務総長、13日)。この間、内戦終結をめざす国連安保理決議2254(2015年12月採択)を基礎に、シリア和平協議のプロセスが断続的に進められてきました。各国は、外部からの軍事介入ではなく、困難はあっても、停戦と政治的解決を追求すべきです。

追随でなく外交努力を

 安倍首相は、米英仏による不法な軍事攻撃を「これ以上の事態の悪化を防ぐための措置と理解している」と昨年に続き支持を表明しました。これは、国連決議に基づかない国際法違反の軍事介入を正当化し、内戦悪化をもたらす側に日本を立たせるものです。日本は何があっても米国を支持する追従ではなく、シリア和平に向け米ロをはじめ各国に働きかけるなど、外交努力こそ強めるべきです。


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