2018年3月30日(金)
きょうの潮流
「不思議なことが起きている」。日本のエネルギー政策の中長期的な方針「エネルギー基本計画」の見直しを議論するため、今週開かれた審議会でのことです。必ずしも原発に反対しているわけではない委員から疑問が発せられました▼現行の計画は2014年に安倍政権が閣議決定したもの。原子力や石炭を「重要なベースロード電源」と位置づけ、30年度の電源構成の目標を原子力20~22%、石炭26%、再エネ22~24%と決めました。法律で少なくとも3年ごとに見直すことになっているため、審議会が再開されたのです▼ところが、経産相が第1回会議で「目標に向けた取り組みは道半ば。計画の骨格を変える段階にない」と、議論の方向性に枠をはめました。今回の会議の資料も、30年目標を踏襲し「確実な実現」に向けた対応をまとめていました▼政府は、約30基の原発再稼働も「達成可能」だと説明。課題は「福島原発事故で失われた社会的信頼の獲得」だと繰り返しています。しかし、なぜ社会的信頼をなくしたのか。議論はほとんどありません▼原発コストの問題の検証も改めてしていません。先日、四国電力が伊方原発2号機の廃炉を決定。東京電力の福島第1原発以外の廃炉は9基目です。原発は安いどころか、経済的に引き合わないことを示しているのでは▼先の委員は、見直しに向けた審議会なのに「見直さない前提になっている」と批判していました。この審議会のあり方自体が、社会的信頼の獲得には程遠いといえます。