2018年3月28日(水)
佐川氏喚問 “不自然”証言 疑惑深まる
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「刑事訴追を受ける恐れがあり、(証言を)控える」。学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で証人喚問に出席した佐川宣寿・財務省前理財局長は、証言拒否を繰り返しました。他方で安倍晋三首相と妻の昭恵氏の影響は、「なかった」と証拠も示さず否定。首相夫妻を守るためだけに不自然な証言を繰り返したかっこうで、疑惑はかえって深まりました。
午前9時26分ごろ、参院第1委員会室に佐川氏が入ると、ざわついていた議場が静まりました。顔は土気色。誰に目をあわすわけでもないのに、視線を変え続けます。ちょうど1年間、理財局長として野党議員の質問をふてぶてしくはねつけていたのとはまったく異なる姿でした。
公文書 改ざんの核心黙秘
改ざん前の国有地取引の決裁文書になぜ安倍首相夫妻の名前があったのか―。財務省による公文書改ざん事件の核心です。
改ざん前の文書には、学園理事長だった籠池泰典被告=詐欺罪で起訴=が昭恵氏に「いい土地ですから、前に進めてください」といわれたことを近畿財務局に伝えた(2014年4月28日)とする記述がありました。約1カ月後には、消極的だった財務局が「協力させていただく」と姿勢を変えます。これらの経緯はいずれも抹消されていました。
日本共産党の小池晃書記局長は、「私人」である昭恵氏が財務省の決裁文書に出るという異例の事態について、こう問いただしました。「昭恵さんの名前が決裁文書に出ることは特別だという感じを持ちませんでしたか」
改ざんの関与とは直接関係ない質問にもかかわらず、佐川氏は「刑事訴追のおそれ」を口実に証言を拒否しました。
小池書記局長は、昭恵氏の名前をどこかでみたのだから証言すべきだと厳しく抗議し、一時、審議がとまりました。
一方で、佐川氏は自民党の丸川珠代参院議員の質問に対し、首相夫妻や官邸からの改ざんの指示については「ございません」と断言。自らが改ざんにかかわったかどうかは、いっさい口を閉ざしながら、その指示だけは否定するという矛盾した態度をとりました。
また佐川氏は国有地取引に関して安倍首相夫妻の影響は、「あったと考えていない」と、自分の“主観”を持ち出して証言しました。
官邸関与 答弁「調整」の疑い
佐川氏は理財局長のときに、学園との事前の価格交渉を否定するなど虚偽答弁の疑いがもたれています。一連の答弁について首相官邸が関与したかどうかも焦点のひとつです。
小池書記局長は、昨年3月の参院予算委員会で質問した際に、「総理に対する質問」として事前に通告していたことを紹介。「あなたの答弁内容は首相官邸とも調整しているということになるのではないか」と追及しました。
佐川氏は「調整とかいうことではなく」としつつ、「理財局で書いて(財務)大臣なり、総理にお渡しする」と証言しました。
また自由党の森ゆうこ議員の質問に対して、「官邸から何か質問があれば現場の課長が対応する」「官邸の秘書官が(理財局の)たぶん課長クラスと調整していたと思う」と「調整」を認めました。
官邸が虚偽答弁に関与した疑いがいっそう強まったのです。
矛盾発言 「偽証」か「虚偽」か
同日午後から行われた衆院での証人喚問では、佐川氏が虚偽証言をした疑いが日本共産党の宮本岳志議員の質問で浮かび上がりました。
宮本議員は昨年2月24日の予算委員会で、「国有地売却に関する交渉記録、面会記録は残っているな」と質問。佐川氏は「(宮本議員からの)依頼をうけ確認しました」と前置きをし、「記録が残っていない」と断言していました。
ところが証人喚問では宮本議員らの質問に「(保存期間が1年未満という)財務省の文書管理記録(規則)をもって答弁した」と証言。交渉記録が実際にあったかどうか確認していなかったかのように変更しました。
交渉記録については、昨年2月24日以降も佐川氏は繰り返し国会で質問を受けていますが「残っていない」と答弁し続けていました。
議院証言法では、うその証言をすると3カ月以上、10年以下の懲役に処させるという罰則があります。宮本議員は「規定を確認しただけというのは通らない。証言が偽証であるか、昨年の答弁が虚偽であるかふたつにひとつだ」と指摘しました。
国有地取引を担当していた近畿財務局OBは証人喚問をみてこう指摘します。
「肝心なところで証言拒否をしたことに腹がたった。近畿財務局で自殺者が出た責任をどう考えているのか。少しは勇気をもって証言してほしい。佐川氏が証言しないなら昭恵氏らを証人喚問して追及すべきだ」
小渕・甘利氏事件 弁護も佐川氏の補佐人
「刑事訴追の恐れがありますので」「答弁を差し控えたい」と繰り返した佐川氏。証人喚問で佐川氏の補佐人を務めたのは元検事の熊田彰英弁護士です。後ろに控え、何度も佐川氏に耳打ちする姿に注目が集まりました。
熊田弁護士は、東京地検特捜部などに勤め、2014年に弁護士に転身。報道によると、小渕優子元経済産業相の後援会の政治資金規正法違反事件や、甘利明元経済再生担当相らがあっせん利得処罰法違反の疑いで刑事告発され不起訴となった事件の弁護なども担当しています。
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