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2018年3月25日(日)

佐川氏喚問の焦点 公文書改ざんなぜ

国有地値引きの政治圧力、解明を

 国有地取引をめぐる財務省の決裁文書(公文書)改ざん事件にまで発展した「森友学園」疑惑で、改ざん当時、財務省理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官の証人喚問が27日、衆参両予算委員会で行われます。改ざんは誰が何のために行ったのか、8億円もの国有地値引き売却にどんな政治的圧力が働いたのか―解明点は山積みしています。


改ざん いつ知った

年表:「森友文書」をめぐる政府の対応

 公文書は「歴史的事実の記録」であり、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」(公文書管理法第1条)です。それを改ざんすること自体が主権者である国民を欺く行為であり、改ざん後の公文書を国会に提出したことは、行政府が立法府を欺くものです。今回の改ざん事件は「憲法に明記された国民主権と議会制民主主義を破壊する歴史的犯罪行為」(日本共産党の志位和夫委員長)にほかなりません。

 ところが、改ざん当事者の政府は、「歴史の偽造という認識はない。由々しき事態」(麻生太郎財務相)という程度のとらえ方です。

 改ざん疑惑報道以降の政府の対応には、進んで改ざんの事実を知らせようという姿勢はありませんでした。安倍晋三首相、菅義偉官房長官が、改ざん前文書の一部が国土交通省内に存在することを把握したのは今月6日。財務省側も知っていましたが、「一つの情報」(太田充理財局長)扱いにし、12日の改ざん文書の公表まで国会には改ざん文書の存在の有無も答えず、既に開示されていた改ざん後の文書を平然と出していたのです。

 政権ぐるみの改ざん文書隠しのなかで、佐川氏はどうかかわったのかが問われています。

政治からの指示は

 「(改ざんは)理財局の一部職員により行われた」「最終責任者が理財局長である佐川だ」―。麻生財務相は、決裁文書改ざんの責任をもっぱら佐川氏だけにかぶせる主張を繰り返してきました。

 しかし、公文書を改ざんすることは犯罪行為であり、“省益”にもならない改ざんを官僚が自らすすんで行うとは考えられません。省庁幹部経験者も口をそろえて「役人だけの判断で公文書の改ざんなどできるはずがない。政治からの何らかの指示があったとしか思えない」と指摘しています。

 麻生財務相は「佐川にいろんな圧力があったとは全く考えていない」(19日、参院予算委員会)と断言するものの、その根拠は示していません。

 佐川氏は、9日に国税庁長官を辞任した際に、福田淳一財務事務次官から聞き取り調査を受けましたが、改ざんの関与について「刑事訴追の可能性もある」ことを理由に一切答えていません。刑事責任が問われる問題を麻生財務相は、佐川氏から直接聞かず、「(改ざんの)文言を見る限りでは、国会の答弁が誤解を受けるとみられたので佐川前長官の関与の度合いは大きかっただろう」と推測で述べているのです。

 改ざんに官邸・政治家の関与や圧力はなかったのか、佐川氏はどこまで知っているのか―証人喚問ではこの点を明らかにする必要があります。

改ざんした目的は

 改ざんはどのような目的で何のために行われたのかも究明点です。

 麻生財務相はここでも「書き換えは、これまでの佐川の答弁が誤解を受けないようにするために行われた」と説明。「(佐川氏の)最終責任になる可能性が大きい」と主張しています。

 しかし、安倍首相の進退言及答弁=「私や妻が関係していれば、総理大臣も国会議員も辞める」(17年2月17日、衆院予算委)とのつじつま合わせをしたのではないかとの疑いは濃厚です。日本共産党の辰巳孝太郎議員の追及に対して、財務省の太田理財局長も「総理あるいは大臣答弁もあるので政府全体の答弁は気にしていた」(16日、参院予算委)と、首相答弁の影響を否定できなくなっています。

 改ざんした決裁文書からは、安倍首相が出てくる部分1カ所、首相の妻・昭恵氏が出てくる部分5カ所がすべて消されていました。

 そもそもなぜ、国会議員でもない昭恵氏の動向が改ざん前の決裁文書に記載されていたのか。日本共産党の小池晃書記局長の追及に、太田局長は「それは基本的に総理夫人だということでということだと思う」(19日、同委)と、昭恵氏に影響力があったことを事実上認めました。

 近畿財務局関係者によると、昨年2月の疑惑発覚後から学園との取引が安倍首相夫妻が関わる案件であることは「常識」と受け止められてきました。改ざん前の文書を見ても特別扱いだったのは明らかです。昭恵氏の関与を隠すために改ざんが行われたのではないかを徹底的に明らかにする必要があります。

「適正」だったのか

 森友学園への国有地取引の経過について、佐川氏は「法令に基づき適正にやっている」「価格についてこちらから提示したこともない」と国会で答弁してきました。しかし、森友学園を「特例」的に優遇していたことが次々と明らかになっています。

 なかでも重大なのが、約8億円の国有地値引きにつながった地中ごみの積算根拠。国交省は、くい打ち部分は地下9・9メートル、それ以外は3・8メートルまでごみが埋まっているとして値引きの計算をしています。ところが、試掘した工事業者が、ごみは実際より深くにあると見せかけた虚偽の報告をしたと証言していることが新たに報道で明らかになりました。

 国会でも辰巳氏が、工事業者が国交省に提出した現場写真を提示。工事業者は地下4メートルまで試掘したとしているが、写真のホワイトボードに書かれている深さは3メートルしかないことなどを示し、ごみの積算根拠がデタラメなことを改めて浮き彫りにしました。

 さらに、改ざん前の文書では、2015年1月9日に「近畿財務局が森友学園を訪問し、国の貸付料の概算額を伝える」と記載されていました。太田理財局長は「具体的な金額を提示したことはなかった」と事前の価格提示を否定していますが、辰巳氏は独自に入手した籠池泰典被告(当時の学園理事長、詐欺罪で起訴)のメモを暴露。そこには同年1月13日に近畿財務局が貸付料3400万円を「指にて」「暗黙の提示」をしたと記されており、事前の価格提示を否定する財務省の言い分が崩されています。

 佐川氏の答弁の中身が改めて問われることになります。


佐川前理財局長の答弁と改ざん前文書

 「売買契約の締結に至るまでの近畿財務局と森友学園の交渉記録はございません」(2017年2月24日・衆院予算委)→改ざん前文書で財務局と学園との交渉経過を記述

 「すべて法令に基づいて適正にやっているところでございます」(17年2月24日・衆院財務金融委)→改ざん前文書で「本件貸付処理は、特例的な内容になる」と記述

 「(15年)2月の国有財産近畿地方審議会の前に私どもが具体的な予定価格とか賃料とか、そういったものを先方に提示することはございません」(17年3月2日・参院予算委)→改ざん前文書で「H27.1.9 当局が森友学園を訪問し、国の貸付料の概算額を伝える」と記述


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