2018年3月24日(土)
主張
9条改憲自民党案
無制限の武力行使への暴走だ
自民党の「憲法改正推進本部」が9条改憲の条文案づくりについて、一部の異論を強引に抑え込み、細田博之本部長に対応を一任することを決めました。細田氏ら執行部は、「戦力不保持」規定の9条2項を残し、「必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織」として「自衛隊」の保持を明記する案を基に条文化作業を進める方針です。それは、「必要最小限度の実力組織」として「自衛隊」の保持を明記する当初案のごまかしすら投げ捨て、「自衛」の範囲に限定を設けず、文字通り海外での無制限の武力行使に道を開く危険極まりない案に他なりません。
「戦力不保持」を空文化
9条改憲案として推進本部執行部は当初、9条1項、2項を残して自衛隊を明記する安倍晋三首相の提案に沿って、「9条の2」という別の条文で「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つための必要最小限度の実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」と規定する案を推していました。
自衛隊を「合憲」とする政府の憲法解釈の中にある「必要最小限度の実力組織」という表現を盛り込んだのは、9条改憲の危険性を覆い隠す狙いからでした。しかし、15日の推進本部の全体会合では、「定義があいまい」などの異論が相次ぎました。
このため、22日の全体会合では、「必要最小限度の実力組織」という表現を削除した二つの案が新たに示されました。一任を取り付けた細田氏はこのうち、「前条(注・9条のこと)の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、…自衛隊を保持する」という案を各党に示す意向だとしています。
推進本部の資料によると、同案にある「自衛の措置」とは「自衛権」を意味します。「定義があいまい」どころか、「自衛の措置」=「自衛権」の範囲には何の制約もなくなり、個別的自衛権だけでなく、集団的自衛権も含まれることになります。「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要」だと判断すれば、集団的自衛権の全面的な行使=無制限の海外での武力行使も可能になってしまいます。
しかも、「前条(9条)の規定は…自衛の措置をとることを妨げず」として、「自衛隊」の保持を明記していることも重大です。「自衛隊」は、9条2項の制約が及ばない例外規定だと解釈される恐れがあるからです。歴代政権の憲法解釈を百八十度転換し、安保法制=戦争法によって集団的自衛権の「限定的」な行使を認めた安倍政権の下で、その危険はいよいよ明らかです。戦力不保持、交戦権否認を定めた9条2項を空文化=死文化することは許されません。
反対の声を一層大きく
「森友」公文書改ざんをめぐり、国民主権と議会制民主主義という憲法の基本原則の破壊が大問題になる中、安倍首相や自民党が改憲へと突き進む姿はあまりにも異常です。世論調査でも、安倍政権の下で自衛隊の存在を明記する9条改憲への反対は過半数に達しています。「安倍改憲ノー」の声を一層大きく広げる時です。