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2018年3月22日(木)

主張

「黒田日銀」2期目

破綻した政策続けるのは有害

 日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁の再任が決まり、副総裁に若田部昌澄早稲田大学教授と雨宮正佳前理事が就任して、第2期体制が動きだしました。黒田氏は国会での承認にあたっても、安倍晋三政権と一体になり、異常な金融緩和を続けると表明しました。「異次元」の金融緩和で消費者物価の2%上昇を実現するという目標は5年たっても実現せず、不況打開のため「インフレ」にするという政策自体の誤りが明らかになっています。「カネ余り」が引き起こすバブルや預金の目減り、国債発行の歯止めがなくなったことも重大です。破綻した政策を続けるのは有害です。

安倍政権と一体で

 黒田氏は5年前の2013年3月、白川方明(まさあき)前総裁の辞任を受けて選ばれました。前年末に政権に復帰した安倍氏が総選挙中から日銀の金融政策を非難し、不況打開のため、消費者物価を引き上げる「インフレターゲット(インフレ目標)」を採用すべきだと主張したのを受けたものです。黒田氏は、4月に正式に1期目をスタートさせた後、2年間で2%の消費者物価上昇を実現するために、市中に出回るお金の量(マネタリーベース)を2倍にする異常な金融緩和策を打ち出しました。

 “黒田バズーカ”とも呼ばれたこの政策には当初から強い反対意見がありました。不況で「カネ余り」が続いているのに金融を緩和しても、お金は銀行や大企業にため込まれるだけで、生産や雇用、消費には回らないという当たり前の批判です。実際、日銀が金利を引き下げたり、国債や投資信託などを買い集めたりして市中にばらまいたお金は、銀行が日銀に預ける金や企業の手持ち資金を増やしただけで不況の打開には役立ちません。株価の上昇など投機を招いて大企業や大資産家を豊かにしても、働く人の賃金は上がりません。わずかな賃上げも消費者物価の上昇で帳消しになり、実質賃金は5年間で年額15万円も減りました。

 日銀は金利を引き下げ、「ゼロ」どころか、銀行が日銀に預ける当座預金の一部から手数料を取る「マイナス」金利まで採用したため、中小の金融機関の経営悪化や、庶民の預金の目減り、手数料の引き上げなどが深刻です。

 日銀が国債や投資信託を買い集めたため、日銀の「資産」は異常に膨張し、海外の金利上昇などで金利負担が増えれば、日銀の経営も影響を受けると不安の声が上がっています。とくに長期国債の保有額は450兆円に迫り、発行残高の4割を超えており、安倍政権のもとで大量に発行される国債は事実上日銀が買い支えています。財政法の趣旨に反する事態です。

「アベノミクス」中止を

 目標が達成できず、ひずみや問題点ばかりが目立つ黒田総裁を安倍政権が続投させるのは、日銀の金融緩和策が安倍政権の経済政策「アベノミクス」にがっちりと組み込まれているからです。アベノミクス自体、経済の再生どころか、国民の所得や消費が伸び悩み、破綻が深刻なのは明らかです。

 安倍政権と黒田総裁誕生前後をリポートしたある経済ジャーナリストは、「常に『決められる政治が善』なのであれば、その究極は独裁政治」と警告します(『官僚たちのアベノミクス』)。アベノミクスを中止し、金融政策もまともな政策を取り戻すべきです。


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