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2018年3月16日(金)

2018とくほう・特報

就任1年半 米山新潟県政 着実な一歩

「市民と野党の共同」で誕生

福祉最優先 願い実現へ

 「市民と野党の共同」で誕生した新潟県の米山隆一知事。就任から1年半、柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原発の再稼働問題をはじめ、県民の暮らしや医療、若者対策、農業に関わる分野でも着実な一歩を歩んでいます。

 (吉岡淳一)


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(写真)新潟県議会で所信表明する米山隆一知事

原発 検証徹底的に

世界の資産になる避難策を

 「日本中、世界中に資産になるものをわれわれはつくっていく気概を持って取り組む」。米山知事は「原子力災害時の避難方法に関する検証委員会」の冒頭あいさつ(昨年9月19日)で、こう発言しました。

 2016年10月の県知事選で米山氏は、(1)福島原発の事故原因(2)事故の健康・生活への影響(3)実効性ある避難計画―の三つの検証がなされない限り再稼働しないと公約に掲げ、当選しました。17年9月、三つの検証委員会が発足し、検討すべき課題を整理し、現在、作業を進めているところです。知事の任期中に一定の結論を示す方向です。

 今年2月には、三つの検証委員会全体を見渡す「検証総括委員会」(委員長・池内了名古屋大学名誉教授)をスタートさせています。18年度県予算案では、これら検証に要する費用約5300万円を計上しました。

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(写真)知事室で民主団体などから要望を受ける米山知事(右3人目)=2017年4月

 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機に対し、原子力規制委員会が昨年12月、新規制基準に「適合」するとの判断を示しました。ところが過酷事故時の避難計画については審査対象外で、国は自治体任せです。

 入院患者や障害者など要支援者の避難をバスで実施する場合、運転手の被ばくの危険にどう対応するのか、補償はどうするのか。もし冬季だった場合、豪雪地帯から豪雪地帯に避難せざるを得ないケースも。新潟県は全県民分の安定ヨウ素剤を備蓄していますが、どのタイミングで誰が配布し投与を指示するのか。課題は山積です。

 「新潟の新しい未来を考える会」の片桐奈保美会長は、次のように語ります。「米山さんは『チェルノブイリ事故では4万人避難に1000台のバスが必要だった。それと対比し新潟の場合は1万台のバス、1万人の運転手が必要で避難が大変難しい』と述べていた。知事の発言は当初より少しずつ変わり、受け売りでなく自分の言葉で相当突っ込んで考えている」

 雑誌の新春対談(『住民と自治』1月号)で知事は、次のように語っています。「安全対策は県の役割であるという国から文句を言われない大義名分をつくり、それを東京電力との安全協定という明文規定で補強することで、ちゃんと実行できる枠組みをつくった」

 新規制基準で国が原発に「合格証」を与えても、県民の命を守るのは知事の使命だとの強い決意の表れです。

医療 医師の確保へ

地域の立て直しに力

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(写真)学生とのタウンミーティングで発言する米山知事(左から2人目)=2017年8月

 新潟県は医師不足が深刻です。16年の10万人当たり医師数は全国43位、医療施設従事医師数は44位。10万人当たりの全国平均との比較で、10年に42人少なかったのが、16年には48人に拡大し、格差も広がっています。

 医師総数が増えても絶対数が少ないため、高度医療を担う拠点病院に医師を集中せざるを得ず、地域医療が崩壊の危機に直面しています。有数の豪雪地帯、十日町・津南地域では療養病床がゼロになり、県外の介護施設に入所し、そこで最期を迎える事態もあります。

 医師でもある米山知事は、医師・看護師確保と地域医療の立て直しに力を入れています。新年度予算案では、医学生への修学資金貸与拡充や、新たな看護専門学校開校に向けた取り組みなどを盛り込みました。

 津南町議の半戸義昭さんは知事の施策について「将来的に大変大事なこと。大いにやっていただきたい」と期待を寄せます。町立津南病院は、他の大学病院から医師の派遣を受けていますが、医師の確保に大変苦労していると語り「本来なら国レベルで何とかしてほしい」とも訴えます。

 子ども医療費無料化については、市町村に対する交付金水準を、小学3年生程度から6年生にまで拡大しました。

教育 給付型奨学金

独自に実施 先駆的

 今年4月から県独自に大学生向け給付型奨学金をスタートさせます。米山知事は2月14日の新年度予算案の説明で「経済的な理由により大学への進学を断念することがないように」と、制度の趣旨について述べました。給付月額は、私立=自宅3万円・自宅外4万円、国公立=自宅2万円・自宅外3万円。住民税非課税世帯などの要件がありますが、約300人を見込み、都道府県レベルでの事業としては先駆的です。

 「芸術大を希望していたけれど、学費が高く親に反対され文学部に進学した」という学生と対話した新潟市在住の会社員・鈴木映さん(30)は、「お金の問題で青年の希望に背くことがないよう政治の力で解決すべき問題」とし、給付型奨学金を歓迎します。

農業 米の所得補償

新年度は6地区に

 農業の分野にも力を注いでいます。今年の稲作から、生産調整の廃止と、生産調整達成者への直接支払交付金(10アールあたり7500円)がなくなることに、米どころ新潟では不安の声が起きています。新潟県は今年度から中山間地の集落営農3地区を対象に10アール当たり1万5千円の所得補償を実施していますが、新年度は6地区に拡大させます。

 種子法が今年4月から廃止されることにともない、県が引き続き種子の開発・供給に責任を負うために「種子条例」を施行する方針です。新潟県農民連の鶴巻純一会長も評価します。「県が主要農産物のイネ、大豆、麦の品種改良を行っていくのは非常に大切なことです。いままで新潟県では独自に開発した種子があるが、これからの時代にあった品種改良を行うためにも条例は必要だし、消費者にも喜ばれる品種に成長できると思う」

「命と暮らし守る」が信条

 原発問題でも暮らしや産業政策でも、米山県政の基本にある考え方は、県民の「命と暮らしを守る」(県総合計画・1月策定)こと。月刊誌(全日本民医連『いつでも元気』17年3月号)の巻頭エッセーでは、「(高度成長の)過去の思い込みに囚(とら)われず、今現実に必要とされているものに必要とされている費用を使うことが重要です。私は今その優先順位のトップの1つが、医療・介護・子育て支援の福祉部門であると思います」と述べています。


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