2018年2月27日(火)
主張
学校での「君が代」
強制で思想・良心の自由侵すな
まもなく学校や幼稚園、保育所などの卒業式・卒園式のシーズンです。子どもの新たな出発を祝い、励ます式にしていきたいところです。ところが安倍晋三政権のもとで「日の丸・君が代」の強制が続いています。「日の丸・君が代」にはさまざまな考えを持つ人があり、それへの態度を一律に押し付けるのは、憲法で保障された「個人の尊厳」「思想・良心の自由」の侵害です。子ども一人ひとりの個性と人権が尊重されるべき場に強制はふさわしくありません。
安倍政権で動き強まる
「日の丸・君が代」は日本の侵略戦争のシンボルとして使われたもので、いまも拒否感を抱く人が少なくありません。「日の丸」に向かって起立したり頭を下げたりしたくない、「君が代」を歌いたくないという人の権利は尊重されなければなりません。政府も1999年の国旗・国歌法の制定時に「強制しない」と答弁していました。
ところが多くの学校現場では、文部科学省・教育委員会の指導により、卒業式・入学式で教職員や子どもに「日の丸」に向かって起立し、「君が代」を歌うよう強要しています。毎年、不起立だった教職員が処分され、東京都では2003年からの15年間にのべ500人近くが処分されています。
こうした状況は司法からも問題視されています。東京都の教職員らが処分の撤回を求めて起こした裁判では、減給や停職の処分を取り消す判決が続き、取り消し件数は70件以上に上ります。一連の判決では、教職員に起立・斉唱を強制する職務命令は「思想・良心の自由の間接的な制約になる」と明確にのべています。
しかし、安倍政権は司法の判断を無視して、強制の方向を強めています。4月から実施される新しい幼稚園教育要領と保育所保育指針には、「国旗」や「国歌」に「親しむ」という記述が盛り込まれています。幼い子どもに「日の丸・君が代」への“愛着”をすりこもうというもので、許されません。「要領」や「指針」の改定を理由に、幼児にまで幼稚園や保育所の行事で「日の丸」に頭を下げたり、「君が代」を歌ったりすることが強要される恐れもあります。
強制の強まりは改憲で日本を「戦争をする国」にしようという安倍政権の動きと一体です。「国家」に従順な国民を育てようという点で、「きまり」に従うことなどをことさら強調する「道徳の教科化」とも軌を一にするものです。
いま学校や幼稚園、保育所にはさまざまな国から来た子ども、親が外国人の子どもが増えています。なかにはかつて日本が侵略戦争で被害を与えた国の子どもたちもいます。彼らにまで「日の丸・君が代」を押し付けることが許されていいのでしょうか。
旅立ちにふさわしい式に
本来、「日の丸・君が代」をどのように扱うかは、上から一方的に押し付けるのではなく、それぞれの学校、幼稚園、保育所で、子どもや保護者も含めてじっくり話し合い、合意をつくっていくべきことです。教育委員会などはそうした民主的な話し合いができるように保障する必要があります。保護者から学校などに話し合いを求めることも大切なことです。
「日の丸・君が代」強制をやめ、子どもと教職員、市民の思想・良心の自由を守るよう訴えます。