2018年2月26日(月)
官房機密費 最高裁判決1カ月超
開示 まだ
とにかく隠す 安倍内閣
内閣官房機密費(報償費)の支出関連文書の一部開示を命じた先月19日の最高裁判決から1カ月がたちましたが、政府はいまだに開示していません。ここでも安倍内閣の情報隠しの姿勢が浮き彫りとなっています。(矢野昌弘)
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最高裁判決では、機密費の中でもっとも“つかみ金”の要素が強い「政策推進費」に関する文書の一部開示を命じました。「政策推進費」は、官房長官自らが管理するお金で、領収書も不要です。
判決によって、機密費の金庫から「政策推進費」として官房長官のポケットに入った金額がわかる「政策推進費受払簿」などが開示されることになりました。
ところが、内閣総務官室の対応は判決当日から異常なものでした。判決を受けて、開示方法について相談に訪れた原告と弁護団に会うことすら拒否。原告らが1度渡した要請書を警備員が突き返してくる非常識な対応でした。
その後も弁護団の谷真介弁護士が3回にわたり、電話で問い合わせました。しかし、内閣総務官室は「精査中」と答えるだけで、開示に向けた具体的な説明は一切ないといいます。
判決当日、菅義偉官房長官は「判決を重く受け止めて、内容を十分精査した上で、適切に対応してまいりたい」と述べましたが、実際の行動は、司法軽視と言わざるをえません。本紙の取材に内閣総務官室は「担当者が不在なのでお答えできない」としました。
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憲法も民意も蹂躙
裁判原告・神戸学院大教授(憲法学)上脇博之さん
官房機密費全体の支出が月1億円ですが、そのうち官房長官が領収書なしで自由に使える政策推進費が8千万円なのかそれとも2千万円なのか。それによって国民が受ける官房機密費のイメージが大きく変わります。最高裁判決は、この開示を認めました。かなり重要な「一部」が明らかになる点で画期的です。
しかし、内閣官房からは、どのような手順で、いつ開示するかの説明は今もなく、出せる文書だけでも早く出そうという姿勢はありません。最高裁の判決に真摯(しんし)に対応しているとは到底思えません。
森友学園や加計学園問題などでわかるように、安倍内閣は情報をとにかく隠したがる政権です。今も裁量労働制の虚偽データが大問題です。そんな中で「いま機密費の資料を出したら大変だ」という考えが政権内にあるのではないか、とにかく開示を遅らせたいのだとしか思えない。
安倍政権には、知る権利という人権を保障する気がありません。また、民主主義の国なら当然、国民に説明する責任があるはずなのに、それもない。しかも三権分立のひとつ、最高裁が判決を出してもなお出し渋っている。この態度は憲法や民意を蹂躙(じゅうりん)し続ける政権だからであり、その一環なのだと思います。