2018年2月25日(日)
主張
「森友・加計」疑惑
解明抜きで予算は押し通せぬ
通常国会では、焦点の一つの「森友」疑惑や「加計」疑惑で、佐川宣寿財務省前理財局長(現国税庁長官)や安倍晋三首相の妻の昭恵氏、加計学園の加計孝太郎理事長らの国会喚問もないまま、予算案の審議が続いています。いずれも国政をゆがめた疑惑であるとともに、国の財政にも関わる大問題です。税金の集め方についても使い方についても国会で議論を尽くすのが財政民主主義です。国有地を格安で払い下げた「森友」疑惑や、自治体や国民に巨額の負担を押し付ける「加計」疑惑の解明を尽くさず、予算案を押し通すことは絶対許されません。
財政民主主義に反する
憲法は83条で「財政処理の基本原則」として「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」と定めています。続いて84条は税金の課税は法律に基づく「租税法律主義」を、85条は国費の支出や債務負担は「国会の議決」に基づくことを、86条は内閣が毎会計年度の予算を作成し国会に提出、審議・議決を受けることなどを定めています。これらは総称して「財政民主主義」と呼ばれます。君主や政府が勝手に課税したり国費を支出したりするのを禁止する議会政治の下での大切な原則です。
国民の共有財産である国有地が首相の妻、昭恵氏が「名誉校長」を務めた森友学園の小学校開設のため、当初は異例の貸し付けで、その後は鑑定価格から9割も値引きする破格の安値で払い下げられたのは国の財政に関わる深刻な問題です。森友学園の籠池泰典前理事長夫妻は国などの補助金をだまし取った疑いで起訴されていますが、異常な値引きについては解明が尽くされていません。
森友学園には賃貸契約が結ばれていた当時敷地からゴミが出たというので近畿財務局から1億3000万円が払われ、森友側が購入を申し出ると9億円超の鑑定価格から8億円以上値引きして差し引き1億3400万円という実質ただ同然で売却されました。国の財政に重大な損害を与えたのは明らかなのに、値引きの経緯は佐川氏が「記録は廃棄した」と国会で虚偽答弁して明らかにせず、昭恵氏らの関与が疑われています。財政上も疑惑解明は不可欠です。
首相の「腹心の友」とされる加計氏が理事長の加計学園の獣医学部が、首相肝いりの「国家戦略特区」に開設された「加計」疑惑では「総理のご意向」の文書が出回ったことなどへの疑念は払しょくされていません。しかも獣医学部が開設される愛媛県今治市は約37億円の事業用地を無償で提供したうえ、総事業費の半額を補助します。愛媛県はこのほど総事業費を約186億4000万円と算定し、今治市が補助する約93億2000万円のうち県が約31億円を支援すると明らかにしました。自治体と住民にとって巨額の負担であり、地方交付税の交付や私学補助など国の財政にも影響します。
行政ゆがめたツケ許さず
国有地の格安払い下げや首相の関与が疑われる学部の開設など行政をゆがめたツケが国民や住民の負担に跳ね返ることは許されません。文字通り財政民主主義をゆがめるものです。
佐川氏や昭恵氏、加計氏らの国会喚問で疑惑を徹底解明し、安倍政権の責任を明確にすべきです。