しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

2018年2月16日(金)

朝鮮半島情勢 圧力一辺倒 安倍外交の孤立

米韓 対話模索の一方

 平昌五輪閉会後に「正念場」(安倍晋三首相)を迎えるとの見方もある北朝鮮の核・弾道ミサイル開発をめぐり、関係国の駆け引きが激化しています。「南北融和」や米朝対話の動きも出始めた情勢に対して、日本政府は対話を否定。平和的解決を妨害する有害な動きを繰り返していますが、流れについてゆけず、焦りを深めています。

 (竹下岳)


副大統領発言に動揺

 「対話のための対話では意味がない。日米ともに、完全かつ検証可能、不可逆的な非核化を前提としない限り、意味ある対話はできない」。14日夜、トランプ米大統領と1時間15分にわたって電話会談した安倍首相は記者団に対して、こう強調しました。

 この電話会談の前にはペンス米副大統領が12日、米紙ワシントン・ポストのインタビューに「北朝鮮が望むのなら、我々は対話する」と述べました。平昌五輪開会式前の7日、安倍・ペンス両氏は東京での会談で北朝鮮への「最大限の圧力」をかけることで一致したにもかかわらず、「核放棄」を前提としない対話を示唆したことで、政府内に動揺が広がりました。今回の電話会談には、“軌道修正”を図る狙いが見えてきます。

 しかし、「圧力一辺倒」の日本と、経済・軍事両面での圧力と並行して「対話」も模索する米国との間に戦略的なずれがあることは明らかです。実際、ペンス氏の発言は単なる個人的見解ではなく、米国務省のナウアート報道官も13日、韓国側が提案した米朝の「予備的協議」を行う可能性を示唆しています。

 こうした米国の全体的な動きを見ることができない日本政府は焦りを強めているのです。その焦りをさらに加速しているのが韓国と北朝鮮の動きです。

「南北融和」に警戒感

 北朝鮮は平昌五輪に選手団とともに政府高官や芸能団を送り込み、「南北融和」を演出。10日にはソウルの大統領府で文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の妹の金与正(キム・ヨジョン)第一副部長や金永南(キム・ヨンナム)・最高人民会議常任委員長らが会談し、北朝鮮側は訪朝を要請しました。

 一方、日本政府はこうした動きを「ほほえみ外交」(13日、菅義偉官房長官)だと否定的な見方を示し、「日米韓」の連携を分断する動きだとして警戒。日本の一部メディアもこれに追随した報道を繰り返しています。

 しかし、こうした見方は北朝鮮の核・ミサイル問題の解決からみても重大な誤りです。北朝鮮の核・ミサイル開発の根源には朝鮮戦争に伴う南北の分断があるからです。

 むしろ、安倍政権の「圧力一辺倒」の姿勢が、北朝鮮の核・ミサイル問題に立ち向かう上で不可欠な関係各国の団結を阻害しているのです。

 9日に平昌で行われた日韓首脳会談で、安倍首相は「米韓合同軍事演習を延期すべきではない」と主張。これに対して韓国大統領府高官は10日、文大統領が「わが国の主権の問題であり、内政に関する問題だ」と不快感を示したことを明らかにしています。

 仮に北朝鮮側の「ほほえみ外交」に「日米韓」分断の狙いがあったとすれば、安倍首相は、その術中にはまったと言えます。

平昌五輪後に激動も

 25日の平昌五輪閉会後、朝鮮半島情勢は激動を迎える可能性があります。

 米側には、「ブラッディー・ノーズ(鼻血)作戦」と呼ばれる北朝鮮への“限定的”先制攻撃の選択肢が浮上。ただ、全面的な核戦争に発展する危険もあり、米政府内でも可否をめぐって意見が一致していません。

 延期された米韓合同演習の実施も焦点となります。通例、3月~4月にかけて実動演習「フォール・イーグル」と指揮所演習「キー・リゾルブ」が行われ、在日米軍も大挙して参加しています。

 同時に、文大統領訪朝の選択肢も浮上し、対話の流れが一気に加速する可能性もあります。こうした動きの全体をとらえず、「圧力一辺倒」路線に固執するなら、日本は置いてきぼりを食らうのは目に見えています。


pageup