2018年2月16日(金)
主張
「森友学園」疑惑
佐川氏・昭恵氏らの喚問免れぬ
財務省・近畿財務局が大阪の学校法人「森友学園」に国有地を貸し付け、その後、破格の安値で売却した問題で、財務省から次々と新たな文書が明らかになり、「交渉記録は廃棄した」と国会で答弁した佐川宣寿前理財局長(現国税庁長官)のウソが動かしがたくなっています。佐川氏が虚偽答弁までして異例の払い下げを隠したのは、「森友」への国有地売却に安倍晋三首相の妻・昭恵氏の関与が疑われていることと無関係ではありません。与党は佐川氏や昭恵氏らの証人喚問を拒否し、首相は妻の関与を否定しますが、疑惑は本人に聞くしかありません。
文書は交渉記録そのもの
「森友学園」が大阪府豊中市に開設を予定した小学校のために、近畿財務局が最初は異例の貸し付けで、その後は鑑定価格から9割も値引きして払い下げたことをめぐる疑惑は、昨年2月から1年間国政を揺るがし続けている大問題です。国有地は国民の共有財産であり、根拠もなく大幅に値引きされたというのは曖昧にできません。国会では来年度予算案が審議中であり、佐川氏は16日から始まる所得税の確定申告など徴税の元締めです。一刻も早い国会への喚問、疑惑の解明が不可欠です。
昨年の通常国会などで佐川氏は、「森友」との「交渉記録は廃棄した」と言い張り、異例の貸し付けや「森友」が購入を申し出た後の値引きについて説明を拒んできました。経過を調査した会計検査院は昨年11月、「根拠を確認できない」と国会に報告しています。
ところが今年になって1月に5件、2月に20件公表された新たな文書には、財務局内の「法律相談」だといいながら、賃貸契約などでの「森友」側の主張や財務局側の対応が生々しく記録されています。佐川氏は貸し付けにあたって賃料についての「やりとりはない」などとしていましたが、2015年1月の「当局が学校法人を訪問し、国の貸付料の概算額を伝え」ると記されたものもあります。実際すでに判明している別の資料では、財務局が金額を伝え、契約段階でさらに引き下げたことが明らかになっています。まさに「法律相談」どころか「森友」との交渉経過を示す文書そのものです。
一部の文書は会計検査院にも提出されていません。「交渉記録は廃棄した」と説明を拒んできた佐川氏の責任は重大です。「森友」疑惑をめぐっては財務局側が国有地の払い下げ交渉で、「ゼロに近い金額まで努力する」などと発言していた音声データの存在も明らかになっています。貸し付けや売却が交渉された当時、昭恵氏は開設予定の小学校の名誉校長で、再三相談に乗り働きかけていた疑いも濃厚です。佐川氏や昭恵氏の国会喚問で疑惑の全貌を明らかにすることが不可欠です。
本人の口から聞きたい
与党や麻生太郎財務相は、佐川氏が国税庁長官なので理財局長時代の答弁をめぐり喚問できないといいますが、虚偽答弁について説明するのは佐川氏自身の責任です。安倍首相は昭恵氏が関与を否定しているとの答弁を繰り返しますが、本人から何の説明もありません。佐川氏も昭恵氏も本人に問いただすことが求められます。
与党や首相が佐川氏や昭恵氏の国会喚問を拒否するかぎり、「森友」での不信は募る一方です。