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日本共産党

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赤旗

国連・女性差別撤廃委員会の総括所見を受けとめ、すみやかな国際的水準のジェンダー平等実現を

―「第6次男女共同参画基本計画」策定にあたって

2025年3月5日 日本共産党国会議員団 日本共産党ジェンダー平等委員会

 日本共産党国会議員団とジェンダー平等委員会は5日、連名で政府への申し入れを行いました。


 世界ではジェンダー平等が歴史的な前進をとげています。日本でも、この間、男女賃金格差の公表制度の実現、不同意性交等罪の創設など刑法改正、パートナーシップ制度の拡大と同性婚など当事者の権利を認める画期的な判決の連続、選択的夫婦別姓を求める世論と運動の広がり、経口中絶薬の承認をはじめとする性と健康の分野における女性の権利の尊重など、世界の動きとも呼応した運動の高まりが政治を動かしてきました。

 しかし日本社会の到達は、ジェンダーギャップ指数ランキングで146カ国中118位という位置が示すように、国際社会の進展から大きく遅れたままです。5年前に策定された第5次男女共同参画基本計画でかかげた数値目標も、女性議員・候補者比率や管理職比率をはじめ多くが未達成です。

 今年2025年は日本が女性差別撤廃条約を批准して40年の節目の年です。昨年10月に行われた国連・女性差別撤廃委員会による第9回日本報告の審議では、日本のジェンダー格差、女性差別の実態が厳しく指摘され、多くの改善すべき点が勧告されました。世界から取り残された日本の遅れを克服し、ジェンダー平等を前進させるためには、女性差別撤廃条約そのものと委員会の総括所見の見地にたって、日本の実態と政府の施策を総点検し、国際的水準にたった施策へと抜本的に見直すことが求められています。

 国連での委員会審議に向けては、女性団体・NGOから数多くのリポートが提出され、審議にも日本から100人以上が参加しました。ブリーフィングでの訴えや委員への熱心な働きかけなど、あらゆる機会を通じて日本の実情や課題を訴え、アピールする活動を繰り広げたことは、メディアからも大きく注目されました。委員会と委員も、NGOとの対話と交流を重視し、女性団体・NGOが報告した内容が、日本政府代表団への質疑にも生かされ、数多くの課題が総括所見に取り入れられたことは画期的です。すでに女性団体・NGOのみなさんは、総括所見の内容の実現のために運動をはじめています。

 こうした女性団体・NGOをはじめとして日本の女性たちが訴えてきた声と委員会の総括所見を正面から受けとめ、条約批准40年の年にふさわしく施策を抜本的に発展させること、それらを今年中に策定される第6次男女共同参画基本計画に全面的に生かすことを求めるものです。

 またこうした状況にあるにもかかわらず、外務省が国連の女性差別撤廃委員会を日本の任意拠出金の使途から除外すると国連に通知したことは、日本は人権後進国だと表すような対応です。撤回を求めます。

1.今国会で実現すべき緊急課題

 今国会で、まず次の緊急課題に取り組み、実現すべきです。

 まず選択的夫婦別姓です。昨年の総選挙の結果、国会内でも賛成の立場をとる議員が多数になり、導入しない理由はなりたたなくなっています。今になって出てきている「旧姓使用の拡大」の議論は、不利益を解決するものではないどころか今以上に煩雑な手続きを強いられる恐れさえあります。なにより姓名は個人がそれまで生きてきた人生の象徴であって、変更を強制されないことは人格権の大事な一部です。だからこそ30年前、法制審は選択的夫婦別姓の導入を答申したのです。女性差別撤廃委員会からも20年以上前から、4回にわたって勧告を受けてきた課題です。今回の審議でも3回目となるフォローアップ項目にも指摘されており、先送りは許されません。

 また性的マイノリティー・LGBT/SOGIの権利に関して、委員会は同性婚を認めるよう勧告しました。この課題では、同性であるために結婚できないことは国民の幸福追求権を定めた憲法13条に違反する、と指摘した24年12月の福岡高裁判決をふくめ、すでに多くの違憲判決が出されています。性同一性障害特例法に関する裁判では、最高裁判決も確定しています。

 個人の多様な生き方、人権を尊重する社会にするために、選択的夫婦別姓制度の実現、同性婚の法制化、性同一性障害特例法の抜本的改正などにただちに踏み出すべきです。

 さらに個人通報制度などを定めるなど、女性差別撤廃条約を実効あるものにする選択議定書は、20年来、委員会から繰り返し批准を求められ、第5次計画でも「早期締結について真剣な検討を進める」と明記しています。「検討中」の繰り返しに終止符を打ち、早期に批准することを求めます。

2.「第6次男女共同参画基本計画」策定にあたって

 第6次男女共同参画基本計画に次の内容を盛り込むよう要請します。

(1)実効ある法整備で男女賃金格差の解消など雇用のジェンダー平等推進を

 条約批准にむけて制定された男女雇用機会均等法も今年で40年を迎えます。しかし賃金格差や非正規雇用の7割が女性であるなど、雇用における男女格差は依然として深刻で、女性の貧困、老後の困難に直結しています。総括所見で指摘されたように、間接差別を含む差別の定義を明確にし、暫定的特別措置の導入を含め、実効性のある法整備をおこなうべきです。

・男女賃金格差を解消するため、公表に加えて企業に是正計画策定と是正措置の義務づけを

・同一価値労働同一賃金、均等待遇の原則の明記、間接差別禁止の強化などの法改正を

・賃上げと一体の労働時間短縮、「1日7時間、週35時間労働制」へすみやかな移行を

・非正規ワーカーの無期雇用への転換・正規化促進、最低賃金の時給1500円以上への引き上げを

・ケア労働、医療・介護、福祉、保育・学童保育職員の処遇改善と人員配置の充実を

(2)男女50%50%の目標をかかげ、女性の政治、政策・意思決定への参加促進を

 政府は2003年に、2020年までに「指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度に」の目標を決定し、第2次からの基本計画でも明記してきました。しかしこの目標を達成できなかったばかりか、第5次計画で、「2020年代の可能な限り早期に30%程度」へと先送りしたことは、現在にいたる重大な遅れをもたらしました。さらに総括所見が指摘するように、もはや30%という目標自体が問題であり、あらゆる分野で男女同数をめざすことが国際社会の合意となっています。

・「指導的地位に女性が占める割合」の目標は、男女50%50%に引き上げること

・クオータ制など、暫定的特別措置を活用し、目標達成へ本気の取り組みを

・女性候補者の供託金の引き下げを含め、国政選挙における高すぎる供託金の大幅な引き下げをただちにおこなうこと。民意を反映する比例代表を中心とした民主的な選挙制度改革を

・両立支援策の拡充、あらゆるハラスメント禁止と防止策などの条件整備の強化を

(3)リプロダクティブ・ヘルス&ライツの保障を

 女性の心身の健康、妊娠・出産をめぐる権利と自己決定権を守ることは、女性の人権とジェンダー平等前進にきわめて重要です。そのためには、すべての土台として、互いを尊重し合う人間関係を築くための考え方やスキルなどを学ぶ包括的性教育の導入が不可欠です。しかし日本はこれらの分野でも大きく立ち遅れています。総括所見をふまえ、国際的な水準にふさわしい施策と条件整備が必要です。

・性教育を制限する「はどめ規定」をなくし、年齢に即した科学的な包括的性教育の公教育への導入を

・人工妊娠中絶の配偶者同意要件の撤廃、中絶の合法化・非犯罪化、経済的負担の軽減を

・身体に負担の少ない現代的な中絶・避妊方法や緊急避妊薬を安価で利用しやすく

・「生理の貧困」の根絶をめざして、生理用品の無償配布の拡充、公的施設のトイレへの設置を

・安全な妊娠・出産のために周産期医療体制の拡充、産科医療の確保、性差医療の充実を

・旧優生保護法によるすべての被害者の補償と尊厳回復、差別と偏見の根絶を

(4)ジェンダーにもとづく暴力の根絶と被害者救済の強化を

 女性の声と運動の力が刑法改正を実現し、女性支援法の創設など重要な前進がありました。しかしそれにふさわしい体制の拡充、予算確保はきわめて不十分です。病院拠点型の草分けとして施策をけん引してきたワンストップ支援センターさえ継続が危ぶまれています。

・女性支援施設の職員の正規化などの処遇改善と体制強化、ワンストップ支援センターの根拠法の制定など公的支援の抜本的拡充を

・民間シェルターなどNPOへの助成強化を

・性犯罪防止と被害者支援の強化、警察、検察、裁判官への研修と専門性向上、痴漢対策強化を

・女性の性搾取、児童買春をなくす施策と体制強化、買春者を処罰する売春防止法改正を

・児童ポルノ、性犯罪・性搾取から子どもを守る体制の抜本的強化、被害者支援を

(5)女性の貧困対策の抜本的な強化を

 増税や社会保険料の負担増、コロナ禍による雇い止めや失業、その後の物価高騰と光熱費値上げで女性の貧困はいっそう深刻化しています。総括所見は、日本が「経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で貧困率が最も高く(15・4%)」、とりわけシングルマザーと高齢女性への影響が大きいこと、女性が不安定雇用に偏っていること、適切な社会的セーフティーネットなしに貧困に陥るリスクが高いことを指摘しています。賃上げ、生活を守る緊急支援とあわせて、社会保障の充実など、総合的な支援をつよめることが必要です。

・児童扶養手当の抜本的拡充をはじめ、ひとり親世帯、若年女性、高齢女性の貧困を削減するため、実態調査と緊急支援策、施策の拡充を

・「住まいは人権」の立場で公共住宅の大規模供給、家賃・住宅費補助制度の創設を

・生活保護の基準を物価高騰に見合った水準に抜本的に引き上げ、必要な人がすべて利用できる制度に

・女性の低年金の底上げ、最低保障年金など年金制度の抜本的改善、生計費非課税の原則にもとづく公正な税制への改革を

・所得税法56条の廃止で、自営業、農業の家族従業者の働き分を認めるよう改善を

・技能実習生や難民申請者など外国人の権利を守り、支援の強化を

(6)家父長的・ジェンダーステレオタイプの是正、ジェンダー平等めざす民法改正、女性の人権擁護を

 戦前から引きずる家父長的家族観、女性蔑視、男女役割分担意識などが、現在も社会に根深く残り、ジェンダー平等の前進を妨げています。委員会はこの問題を繰り返し指摘してきました。今回の総括所見でも、「家族及び社会における女性と男性の役割と責任に関する家父長的態度及び差別的固定観念を撤廃」するための包括的戦略を採択し、実施することなどを求めています。民法をジェンダー平等の観点で改正するとともに、あらゆる場から、個人の尊厳を守り、平等な社会をつくる努力をつよめるべきです。

・ただちに選択的夫婦別姓制度の導入を

・性的マイノリティー・LGBT/SOGIの権利を守り、同性婚の法制化、性同一性障害特例法の抜本的改正を

・社会に根深い家父長的態度、ジェンダーステレオタイプの是正に積極的で包括的な施策を

・性差別、女性への暴力を助長するポルノ等の異常な氾濫に対する実効ある施策の強化を

・合意なき「共同親権」の強制や、虐待やDV等があるケースで面会交流権優先などがないよう、家庭裁判所の体制強化、DV対応等の専門性の向上を

(7)平和とジェンダー平等

 今年は戦後80年、被爆80年の年です。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が、2024年のノーベル平和賞を受賞しました。侵略戦争への深い反省のもと制定された日本国憲法を守り生かし、世界の平和と紛争解決のために日本がふさわしい役割を果たすことが求められています。平和でこそジェンダー平等の実現は可能であり、またあらゆる分野でジェンダー平等社会を実現することは、平和の実現、紛争の解決や社会の持続的な発展を促進します。

・唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約を批准し、核兵器廃絶をめざす先頭に

・「日米同盟絶対」の大軍拡をやめて、憲法9条生かした平和外交を

・日本軍「慰安婦」への加害の事実を認め、謝罪と賠償、被害者の尊厳回復、教科書への適切な反映を

・米軍基地の米兵による性犯罪防止、処罰と被害者補償、日米地位協定の抜本的改定を

(8)選択議定書の早期批准と国内のジェンダー平等推進体制の抜本的強化を

 委員会は、条約と委員会の勧告が十分実施されてないことを繰り返し、厳しく批判してきました。今回はさらに踏み込んで、「女性問題を所管する専門の省庁をおいていないこと」、男女共同参画局が「その権限、予算、及び人員の観点において限界がある」と指摘し、ジェンダー平等に関する専門省の設立と体制強化、ジェンダー平等の主流化をすすめることを勧告しています。「両性の平等」をうたう日本国憲法と女性差別撤廃条約を全面実施する立場で、国際水準にたって施策をすすめる体制を抜本的につよめることを求めます。

・女性差別撤廃条約の選択議定書の一刻も早い批准を

・ジェンダー平等を推進する専門省庁を新設し、体制・権限、予算を抜本的に強化すること

・ハラスメント禁止条約をはじめ、未批准のILO条約の早期批准を

・「パリ原則」にもとづく独立した国内人権機関の設立を

 以上、主な課題について要望します。

 この間、国民の声と運動が政治を動かし、前進させてきたことは、委員会の総括所見で高く評価されました。条約批准40年の節目の年に、国際的な水準でジェンダー平等を大きく前進させることが求められます。そのためにも、委員会が強調するように、市民社会の声、女性と女性団体の声をしっかり聞き、第6次計画に反映させることをつよく求めます。

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