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日本共産党

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赤旗

37、コメ問題

ゆとりある米生産と備蓄の確保

主食・米の需給と価格の安定に政府が責任を果たします

2024年10月

 スーパーから米が消え、米を買えない人が続出――。この夏以降の主食・米をめぐる異常事態は、わが国の食と農の直面している深刻な危機の一端を浮き彫りにするとともに、政府の無責任な農政の根本からの転換を迫っています。

最大の責任は市場まかせ、米減らしの農政

 今回の事態の最大の責任は、米の生産や安定供給への責任を投げ捨ててきた歴代政府の農政にあります。市場に全面的にゆだねたうえ、消費量が毎年減ることを前提に生産量をぎりぎりに抑え、農家に生産削減を押し付けてきた結果です。

 一年に一度しか収穫できない米は気象や経済情勢の変化により需要と供給にギャップが生まれ、価格の乱高下、流通の不安定化は避けられません。21年はコロナ禍で外食需要が減少し、米価が大暴落、農家は「米作って飯食えねえ!」事態に追い込まれました。今年は逆に、昨年の猛暑で供給が減少したところに訪日外国人の増加、小麦など食料品価格の高騰による米需要の増加が加わり、店頭から米が消える事態になったのです。

 自民党政府はこの混乱を回避・緩和するどころか市場原理に固執し、何もしないで放置する無責任な対応に終始しました。政府が保有する備蓄米の活用も大凶作など非常時に限り、過剰時には備蓄米の買い入れを増やし、不足時に放出することは市場をゆがめるとして一貫して否定してきたのです。

 2021年の大暴落の際にとった「対策」らしきものは、米が過剰だからと3年間で60万トンもの減産を生産者に強い、民間在庫を減らしてきたことです。いくつかの要因がかさなったとはいえ、今回の事態を生み出した過去最低の米の民間在庫は政府の米減らし政策の帰結にほかなりません。わずかの需給変動で米流通が混乱し、米価が乱高下、そのたびに生産現場が疲弊し、他方で米不足が発生する現状は、米を市場にゆだねることの危険性を示しています。

 このままでは来年の端境期も米不足が起きかねません。農水省は7月末に公表した来年度の需給見通しでは、来年6月末の民間在庫は今年よりさらに少ない量です。それも、来年の需要量が今年より29万トン減ると見込んでのことです。今年の需要が昨年より20万トン増えたことを考慮しない見込みです。消費が少しでも上振れすればたちまち今年以上の米不足・流通混乱が起きるのは必至でしょう。

このままでは米の自給も危うい

 重大なのは米不足の不安が一過性に終わらないことです。長年の自民党農政によって米の生産基盤が著しく弱体化させられているからです。

 最大の要因は生産者米価の下落です。この30年来、市場まかせの米政策によって生産者米価は下落を続け、以前には1俵(60kg)平均2万円を超えていた米価が一昨年は1万3,000円前後にまで低下。平均生産費1万5,000円を大きく下回り、米農家の時給が2021年2022年続けてわずか10円という悲惨な事態に追い込まれました。今年は生産者米価が回復したとはいえ、肥料代など生産費も高騰しており、米農家が安心して生産を続けられる状況には至っていません。

 このもとで米農家は次々に離農を余儀なくされ、2000年に175万戸あったのが23年には58万戸に激減。残っている農家も70歳以上が59%を占め、近い将来の大量リタイアは避けられません。三菱総研は昨年7月、米需要量は今後減少するが、生産量は農家の激減が主な要因でそれ以上に落ち込み、このままでは2040年には最大156万トンが不足するという試算を発表しているほどです。

 わが国の食料自給率38%は先進諸国で最低の異常な水準です。そのもとでかろうじて自給してきたのが米です。その米さえ自給できなくなる。世界は「金さえ出せば食料は輸入できる」時代ではなくなっている時、それがいかに危ういかはあきらかでしょう。米農家の離農は耕作放棄を一気に広げ、水田のもつ国土や環境を守る役割も弱めています。

米政策を抜本的に転換する――日本共産党

 自民党政治を大もとから転換し、次代の担い手を確保・育成し、米作り・水田農業を再生することは国民の生存、国土や環境に関わる待ったなしの課題です。

 日本共産党は農業を国の基幹産業に位置づけ、食料自給率の向上を国政の柱に位置付け、農業と農村の再生に全力をつくします。その一環として政府の米政策を抜本的に転換し、米の生産と安定供給を維持し、水田農業を守ります。

 米の需給と価格の安定に国が責任を持つ――米の価格や流通の全面的な市場まかせをやめ、豊作などによる供給増や需要減で価格の大幅な下落が予測される場合には国が備蓄米の買い増しを行います。不作や消費増などで品薄になり、米不足、流通の混乱が懸念される場合には備蓄米を放出します。

 ゆとりある需給・備蓄を確保する――政府の需要見通しの作成にあたっては消費が毎年減少することを前提に生産量をぎりぎりあわせるやり方を改め、ゆとりある生産量を確保します。主食の安定供給の確保ために政府の備蓄数量を増やします。

 価格保障や所得補償を抜本的に充実する――将来にわたる米生産の維持・安定をはかるためには次代の担い手の本格的な確保・育成が欠かせません。そのためには、大多数の農家が安心して生産に励める条件を整備が決定的です。その柱は生産費をつぐなう米価保障であり、農村で暮らせる所得補償の実現です。

 米農家に生産費を保障するため、米生産費の平均と当該年度の米販売価格(農家手取り)の差額を補てんする制度を創設します。地方ごとの生産性の格差を考慮して加算金を上乗せします。当面、野党が要求している戸別所得補償を実現します。

 低所得者などへの食料支援を抜本的に強化する――実質賃金が低下し、物価が高騰する中で米を食べたくても食べられない生活困窮者が増えています。米国では農務省予算の7割以上(約23兆円)を国民への食料支援に充て、国内の農産物の需要を喚起しています。子供食堂・フードバンクへの備蓄米の放出などを含め生活困窮者・低所得者への食料支援を抜本的に強めます。

 今回の米不足で資金繰りなどで苦境に陥る零細米小売業者への支援を強めます。

 水田のもつ豊かな生産力を生かし、総合的な利用を推進する――水田は災害防止、水源涵養、景観維持など国土や環境を保全する大事な役割をはたしています。米需要の減少にあわせて、農家の自己責任による米減産を押しつけるやり方では、水田の荒廃が広がるばかりです。食料自給率の向上という点からも、水田のもつ豊かな生産力をフルに生かし、総合的な利用を促進します。

 ――主食用米とともに加工用・飼料用米、麦・大豆・飼料作物など含めて地域の条件に応じた総合的な利用で可能な限り水田を維持します。

 ――水田活用直接支払い交付金について、「5年に一度水張り」しない水田を対象から外し水田の畑地化を押しつけるなど財政支出削減を最優先する立場からの見直し・削減は中止します。米と他作物との収益性の格差を是正することを基本に維持・拡充し、畑作物等の作付けが長期化し、実質的に畑地化している場合でも、麦・大豆・飼料作物の生産が維持できるよう手厚い支援を行います。

 ミニマムアクセス米の輸入を削減・廃止する―――自民党政府は、農家には米過剰を理由に生産削減を押しつけながら、米消費の1割に及ぶミニマムアクセス米の輸入を続けています。その半分は割高な米国産で占められています。こんな不条理なミニマムアクセス米はきっぱり廃止すべきです。WTO協定上は最低輸入機会の提供にすぎず全量輸入は義務ではありません。当面、「義務」輸入は中止します。

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