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2018年1月29日(月)

2018とくほう・特報

追い詰められる生活保護利用者

焼きザケ一切れ 2食分

自公政権下で扶助4分の1カットに

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 安倍自民・公明政権は今年10月から3年かけ、生活保護のうち食費や光熱費など生活費にあたる「生活扶助費」を最大5%引き下げる方針です。利用者の7割が減らされます。自公政権による2004年以降の度重なる改悪で、都市部(1級地の1)の70歳以上の単身世帯はすでに生活扶助費が2割以上減っており、今回引き下げられれば24・3%ものカットになります。日本共産党東京都議団の調べで分かりました。(内藤真己子)


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(写真)吉田喜美さんは、シルバーカーが壊れても買い替えられませんでしたが、墨田生活と健康を守る会の仲間がプレゼントしてくれ外出に困らなくなりました=東京都墨田区

生存権かけ“たたかいます”

 「これ以上減ったら1日2食にするしかないですね」。試算を見て、東京都墨田区の高齢者住宅で1人暮らしする吉田喜美さん(88)の顔が曇りました。旅館の仲居を70歳で解雇され、生活保護を利用するようになりました。年金はありません。

 吉田さんの生活扶助費は03年度に月9万3850円でしたが、昨年度は月7万4630円に減っていました。家賃と医療費以外を賄います。

 小泉自公政権が70歳以上の老齢加算を04年度から縮小・廃止。安倍政権が13年8月以降、生活扶助費を最大10%引き下げた結果です。一方、消費者物価指数(総務省)の食料費は03年から17年にかけて12・7%も上昇しています。

 吉田さんの生活は追い詰められています。総菜の焼きザケやサバのみそ煮の一切れを2回に分けて食べます。野菜は100円均一ショップの千切りキャベツがせいぜいです。果物には手が出ません。

 壊れたテレビは買い替えられません。電気ごたつも壊れ、もらった電気カーペットを夜だけつけます。街灯を頼り、部屋の電灯はできるだけ使いません。洋服はもらった古着です。下着だけは2年に1回2枚400円のパンツを買いに行きます。

 新たな引き下げで生活扶助費は月7万1000円へ下がります。老齢加算廃止は憲法25条違反と訴え「生存権裁判」をたたかった吉田さんは言います。「年寄りは早く死ねってことですね。安倍(首相)さんの枕元に化けて出たいぐらい。もう一度たたかいますよ」。安倍政権の生活扶助費引き下げを問う「新・生存権裁判」に加わる決意です。

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風呂は週1回程度―これ以上生活費削れない

低所得世帯支援の政策こそ

 「安倍首相は生活保護を削りながら軍事費を増やし、憲法9条を変えようとしています。絶対に許せませんよ」。こう話すのは、東京都調布市の都営住宅で慢性の病気の長女(67)と暮らす八木明さん(91)です。生活保護引き下げで削減される国費は160億円。「思いやり予算」など米軍経費の来年度増加分、195億円をあてれば「おつり」がきます。

入退院を繰り返し

 太平洋戦争末期、小笠原諸島の父島から強制疎開させられ東京都内の兵器工場で働きました。広島の原爆投下で「黒い雨」を浴びた工員の作業服が持ち込まれ手洗いしました。戦後は悪性不良性貧血で入退院を繰り返します。無年金。長女が病気で失業してから、生活保護を利用しています。

 老齢加算の廃止、13年以降の生活扶助費引き下げで暮らしは窮迫しています。部屋の電灯は一つしかつけず、蛍光管を一本抜き節約しています。風呂は週1回程度です。

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(写真)八木明さんは都営住宅の電灯を一つしかつけず節約しています=東京都調布市

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(写真)安形義弘さん

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(写真)尾藤廣喜さん

 八木さんも生存権裁判の元原告です。全国29カ所で約1000人がたたかっている「新・生存権裁判」にも加わって、たたかう予定です。

 同裁判の原告、谷口照美さん(66)=福岡県=は昨年、意見陳述で裁判にかける思いを語りました。「母子家庭、高齢者、障害者、みな引き下げで困っています。その状況を踏まえずに問答無用で保護費を引き下げるのは人の生活を無視した暴挙です。弱いものを追い詰める政策は、生活保護を受ける人に限らず社会みんなを追い詰めることになる」

 「引き下げは利用者の現状を無視している」。全国生活と健康を守る会連合会の安形義弘会長は訴えます。「生活保護は憲法25条にもとづき、人として尊厳が保障され、経済的にも日常生活や社会生活においても、人間らしい自立した生活を保障し『生きる希望』が持てるための制度です。ところが相次ぐ基準引き下げで、それが脅かされている。追い打ちをかける引き下げの撤回を求めます」

貧困対策にも逆行

 今回の方針では、子どもが多い世帯ほど大きく削減されます。ひとり親世帯は、母子加算が2割も減らされる影響を受けます。

 大阪市内で中学生と小学生の娘と暮らす40代の佳世さん(仮名)は多重債務の夫と離婚。自身も病気で働けなくなりました。「生活保護が受けられると決まったとき、国は神様だと思いました。子どもを立派に育てて社会の一員として送り出すことが恩返しだと思っています」

 教育費を優先し節約を重ねています。大学進学を希望する長女を昨年11月から学習塾に通わせ始めました。英語、数学、理科で月2万2000円。大阪市の塾代助成事業から月1万円が出ますが、残りは生活扶助費からねん出します。暖房は石油ファンヒーター。灯油は18リットルが1460円の安い店へ自転車で買いに行き、一冬持たせます。安売りスーパーの100グラム39円の鶏むね肉の南蛮漬けが定番おかずです。

 ところが今回、月15万5000円の生活扶助費が同8000円も減らされます。佳世さんは怒ります。「生活費はこれ以上削れない。長女の塾を2教科に減らすしかないと思っています。でもこれって、子どもの貧困対策をするって言う国の方針と真逆じゃないですか」

際限ない引き下げ

 安倍内閣が保護費削減の口実にしているのは14年の「全国消費実態調査」で生活保護を利用していない「収入下位10%」の低所得者世帯の支出が減っていることです。

 「生活保護を利用していない低所得層と保護基準を比較すれば、保護基準の際限のない引き下げが起こります」。こう指摘するのは、生活保護問題対策全国会議代表幹事の尾藤廣喜弁護士です。

 「日本は生活保護基準以下の収入の人のうち実際に利用している人の割合(捕捉率)は2割程度で先進各国と比べ著しく低い。『収入下位10%』には、生活保護基準以下で生活をしている人たちが多く含まれています。憲法が保障する、健康で文化的な最低限度の生活を保障する生活保護基準をこんな手法で決めることが問題です」

政治の責任果たせ

 生活保護基準の引き下げは、住民税非課税基準や最低賃金、年金、就学援助など広範な国民生活に影響します。前出の安形会長は、「安倍首相が『貧困の連鎖を断ち切る』というなら生活保護基準を削るのではなく、政治の責任で低所得世帯の生活を支援する政策と、必要な人が安心して受けられる生活保護制度への改善を行うべきだ」と訴えます。


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