2018年1月26日(金)
志位委員長の代表質問 衆院本会議
日本共産党の志位和夫委員長が25日に衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。
私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。
冒頭、草津白根山噴火で犠牲になった方への哀悼とともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。政府に、万全の対応とともに、全国111の活火山の警戒・監視体制の総点検を求めるものです。
国政私物化――特別国会の質疑で疑惑はいよいよ深刻、幕引きは絶対に許されない
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森友・加計疑惑について質問します。前国会の質疑を通じて疑惑はいよいよ深まりました。
森友疑惑では、財務省の側から森友学園に値引き売却を提案し、「口裏合わせ」をはかっていたことを示す「音声データ」の存在を政府も認めざるを得なくなりました。総理、売る側の財務省が値引き売却を提案するというのは、あまりに異常なことだと考えませんか。さらに、「交渉記録を破棄した」と国会で答弁しながら、交渉に関連する記録が存在していたことが明らかになりました。これは、国会を愚弄(ぐろう)するものではありませんか。
加計疑惑では、2015年6月の国家戦略特区諮問会議のワーキンググループに、加計関係者が出席・発言していたことが隠され続け、速記録まで破棄されていたことが明らかになりました。加計学園の獣医学部新設が決定される1年半も前から、加計関係者が政府の会合に出席していた――総理、これは「加計ありき」としか言いようのない異常な事態だと思いませんか。
ここまで深刻になった国政私物化疑惑を、このまま幕引きにするなど絶対に許されません。安倍昭恵氏と加計孝太郎氏の国会招致、すべての関連文書の公表を強く求めます。総理の見解を問うものです。
暮らしと経済――格差と貧困の拡大、生活保護削減、「働き方改革」を問う
安倍政権の5年間で、格差が拡大し、貧困が悪化した――この事実を認めるか
暮らしと経済について質問します。
安倍政権の5年間は何をもたらしたか。大企業は史上最大の利益をあげ、内部留保は400兆円を超えるまで積み上がり、一握りの超富裕層の資産は3倍にもなりました。
その一方で、働く人の実質賃金は年額で15万円減り、実質消費支出は20万円減りました。総理、安倍政権の5年間で、格差が拡大し、貧困が悪化した――この事実をお認めになりますか。
生活保護――13年の「最大10%削減」に続く「最大5%削減」を問う
こうしたもとで重大なのは、政府が、生活保護を最大5%削減する方針を決めたことです。すでに生活保護は2013年の見直しで最大10%削減されています。昨年末、市民団体が行った「生活保護緊急ホットライン」では、「食事が削られている」「入浴回数が月1回になっている」「耐久消費財の買い替えができない」「サイズの合わない昔の服を着続けている」「真冬に灯油が買えず肺炎になった」などの深刻な実態が寄せられました。さらなる削減の方針に対して、「もう削るところがない」「死んでくれといわれているようだ」との痛切な訴えが出されています。総理に伺います。
第一に、政府は、生活保護削減の理由として、「生活保護を利用していない低所得世帯の生活水準が下がったからそれに合わせて引き下げる」としています。総理は、「安倍政権になって貧困は改善した」と宣伝してきましたが、「低所得世帯の生活水準が下がった」ということは、「貧困は改善」という宣伝がウソであり、「アベノミクス」が失敗したことを、自ら認めることになるではありませんか。
第二に、「低所得世帯の生活水準が下がった」というなら、生活保護を削るのでなく、低所得世帯の生活を支援することこそ、政治の責務ではありませんか。生活保護の捕捉率――利用の要件がある人のうち実際に利用できている人の割合は、2〜3割と言われています。こうした生活保護行政の欠陥にこそメスを入れるべきではありませんか。
生活保護の削減は、広範な国民の暮らしに重大な影響を与えます。住民税、保育料、介護保険料、就学援助、最低賃金などで、低所得世帯の生活悪化に連動します。「低所得世帯の生活水準が下がった」ことを理由に、生活保護を削れば、際限のない「貧困の悪循環」をもたらすことになるではありませんか。
第三に、今回の生活保護削減では、子どもの多い世帯ほど削減幅が大きくなります。都市部に暮らす「夫婦と子ども2人世帯」の場合、生活保護費は年11万円の減額になり、2013年の削減と合わせると年37万円もの大幅な減額になります。総理は、施政方針演説で「生活保護世帯の子どもたちへの支援を拡充します」とのべましたが、やろうとしていることはまったく逆ではありませんか。
生活保護は、憲法25条に明記された国民の生存権を保障する、最後のセーフティーネットです。日本共産党は、生活保護削減方針を撤回し、2013年の削減前の水準に戻すことを強く要求します。今回の削減予算は160億円です。「思いやり予算」など米軍経費の来年度の増加分――195億円をあてれば「おつり」がきます。政府がまず「思いやる」べきはどちらなのか。その答えはあまりにも明瞭ではありませんか。答弁を求めます。
財界の立場の「働かせ方大改悪」でなく、過労死を本気でなくす労基法の抜本改正を
いま一つ、ただしたいのは、総理のいう「働き方改革」についてです。
総理は、「働く人の視点・立場に立った改革」を進めるといっていますが、一体誰のための改革なのか。ここが問題です。
政府の「改革」の目玉とされている「高度プロフェッショナル制度」では、一定の年収の労働者は、どんなに働いても残業代はゼロ。労働時間規制もなくなります。この制度でメリットがあるのは使用者側だけではありませんか。労働者側に一体どんなメリットがあるのですか。過労死をいっそうひどくするだけではありませんか。
この制度の導入を一貫して主導してきたのは経団連です。労働側は、連合も、全労連も、すべての労働団体がこぞって猛反対しています。「高度プロフェッショナル制度」=残業代ゼロ法案が「働く人の視点・立場に立った改革」などでなく、働かせる側――財界の立場に立った制度であることは、明らかではありませんか。
総理のいう残業時間の「上限規制」にも大きな問題があります。政府案では、残業の上限「月45時間」は原則にすぎず、繁忙期は月80時間、100時間という「過労死水準」の残業を容認するものとなっています。
電通は、高橋まつりさんの過労自殺という痛ましい事態をうけ、遺族との合意文書で、繁忙期であっても残業は「月75時間」以内にすると約束しています。月80時間、100時間の残業を容認する政府案は、この約束からもはるかに後退したものではありませんか。総理は、1年前の施政方針演説で、高橋まつりさんの死を悼み、「二度と悲劇を繰り返さない」とのべましたが、あの誓いは一体どこにいったのですか。
安倍政権の「働き方改革」なるものは、徹頭徹尾、財界の立場に立った「働かせ方大改悪」といわなければなりません。
日本共産党は、残業代ゼロ法案の撤回を強く求めます。「残業は週15時間、月45時間、年360時間まで」という大臣告示を法制化し、これを超える残業を認めないこと、終業から翌日の始業まで最低11時間空けるインターバルを確保するなど、真に働く人の立場に立った労働基準法の抜本改正こそ行うべきであります。総理の見解を求めます。
原発再稼働、「核のゴミ」、究極の高コスト――総理の基本認識を問う
原発問題について質問します。
小泉純一郎、細川護熙両元総理が顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が、運転中の原発の即時停止、原発再稼働は一切認めない、自然エネルギーへの全面転換などを柱とした「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表しました。「基本法案」の内容は、わが党の立場と一致するものであり、全面的に賛成です。協力してその実現のために全力をつくす決意であります。
総理に三つの基本点を伺います。
第一に、どの世論調査を見ても、原発再稼働反対は、国民の5割から6割で揺るぎません。それは福島の現実を日本国民が体験したからです。福島では原発事故から7年近くになるのに、いまなお県発表で5万人を超える県民の方々が避難生活を余儀なくされています。家もある。土地もある。草ぼうぼうになったけれども畑もある。でも帰れない。故郷が奪われてしまっている。福島のこの現実を目のあたりにして、再稼働反対はいまや国民的合意になっていると考えますが、総理の認識を問うものです。
第二に、原発を再稼働すれば、計算上わずか6年で、原発の使用済み核燃料貯蔵プールが満杯になります。使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」は、高速増殖炉「もんじゅ」が廃炉となり、再処理工場も稼働のメドはたたず、完全に行き詰まっています。高レベル放射性廃棄物の最終処分場を、この地震・火山列島の一体どこにつくるのか。見通しがないではありませんか。「核のゴミ」という点からも、再稼働推進は完全に破綻しているではありませんか。
第三に、原発事故の処理費用は、すでに政府の見積もりでも21・5兆円に達し、どれだけ膨らむかまったく不明です。全国の原発の廃炉の費用、「核のゴミ」の処理費用など、子々孫々まで巨額の費用を押し付けるのが原発です。総理、コストと言うならば、究極の高コストが原発ではありませんか。
「原発ゼロ」の決断と一体に、再生可能エネルギーの飛躍的普及をはかることこそ、現実的で、真に未来ある道ではありませんか。答弁を求めます。
沖縄米軍基地問題――異常な米軍機の事故続発、辺野古新基地建設を問う
沖縄の米軍基地問題について質問します。
「最初に報告を受けた時はふるえて涙が出ました。娘を見て安心してまた涙が出そうになりました。ただただ子供達を守ってほしい。ただそれだけです」
米軍ヘリからの部品落下事故が起こった宜野湾市・緑ケ丘保育園の父母会のみなさんからいただいた「嘆願書」につづられた、園児のお母さんの一人からの訴えであります。
東村高江での米軍ヘリ炎上大破事故、宜野湾市の保育園と小学校への米軍ヘリからの部品や窓の落下事故、年明けに3件も立て続けに起こった米軍ヘリ不時着事故――沖縄での米軍機事故の続発は、異常事態というほかありません。
許しがたいのは、事故が起こっても、米軍は何事もなかったかのようにすぐに飛行再開を強行していることです。そして、日本政府が、米軍の言い分をうのみにし、飛行再開を許しつづけてきたことです。総理、これで主権国家の政府と言えますか。
総理は、こうした恥ずべき米軍追従姿勢をあらため、沖縄のすべての米軍機の緊急総点検と飛行停止を米国に要求すべきです。学校、保育園、病院などの上空は「最大限、可能な限り飛行しない」などという米軍まかせの取り決めでなく、「一切飛行しない」ことを厳重に約束させるべきです。明確な答弁を求めます。
これまで政府は、「普天間基地は市街地の真ん中にあるから危険、海辺の辺野古に移せば安全」と言って、辺野古新基地建設をごり押ししてきました。
しかし、普天間基地所属の海兵隊の軍用機は、基地周辺だけで事故を起こしているのではありません。この1年余を見ても、名護市、久米島町、伊江村、石垣市、東村、宜野湾市、うるま市、読谷村、渡名喜村と、沖縄全土で事故を起こしているのです。この事実は、普天間基地を辺野古に移したところで、危険な基地が沖縄にあるかぎり、危険は変わらないことを示しているではありませんか。
普天間基地の無条件撤去、辺野古新基地建設の中止、海兵隊の沖縄からの撤退こそ、県民の命と安全を守る唯一の解決策です。総理の見解を求めます。
憲法9条改定、憲法上の制約を覆す大軍拡を問う
最後に憲法9条改定について質問します。
総理は、年頭の会見で、「今年こそ憲法のあるべき姿を提示」するとのべ、年内にも9条改憲の国会発議を行うという姿勢であります。
わが党が、国会で繰り返し明らかにしてきたように、9条に自衛隊を明記すれば、9条2項の空文化=死文化に道を開き、海外の武力行使が無制限になってしまいます。
何よりも国民の多数が、このような憲法改定を望んでいません。日本世論調査会が、年明けに発表した憲法に関する世論調査によると、憲法9条改定について53%が「必要ない」と答え、総理が加速を促す改憲の国会論議には67%が「急ぐ必要はない」と答えています。急いでいるのは、総理、あなただけなのです。国民の多数が望んでいないものを、総理の勝手な都合で、期限まで区切って押し付けるなどというのは、憲法を私物化する態度以外の何ものでもないではありませんか。
政府が、自らのべてきた憲法上の制約を覆す大軍拡を進めようとしていることも重大です。
安倍政権は、自衛隊の戦闘機に搭載する長距離巡航ミサイル導入のための関連予算を、来年度予算案に計上しました。新たなミサイルは、日本海の真ん中から北朝鮮全土に届く性能をもち、敵基地攻撃が可能になります。
さらに、安倍政権は、海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」を改修し、最新鋭戦闘機F35Bが発着できるようにする検討に入ったと報じられています。このような改修がなされれば戦闘機搭載の「空母」を保有することになります。
長距離巡航ミサイルや戦闘機搭載の「空母」は、政府がこれまで「憲法の趣旨」から持つことができないとしてきた「他国に攻撃的な脅威」を与える兵器そのものではありませんか。自衛隊の装備の面でも、従来の憲法解釈をなし崩し的に変更し、「海外で戦争する国」づくりを進めることは断じて認めるわけにはまいりません。
日本共産党は、9条改憲のあらゆる企てを許さず、9条を生かした平和日本を築くために、思想・信条の違いを超えて力をあわせる決意を表明して、私の質問を終わります。