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2018年1月25日(木)

広げよう 安倍9条改憲NO!3000万人署名

憲法問題Q&A

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 安倍政権による憲法9条の改憲をゆるすなと、年明けからも、全国の草の根で「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」(3000万署名)の運動が広がっています。日本共産党も「日本の命運を左右する歴史的闘争」と位置付け、幅広い皆さんとともに全力をあげています。各地の対話で出ている声と結んで、運動の意義と展望を特集します。


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(写真)全国市民アクション結成について記者会見する、発起人や団体代表=2017年9月4日、衆院第1議員会館会議室

Q 「3000万人統一署名」って何?

A 「戦争ダメ」の願い かたちに

 安倍政権による憲法9条の改憲を許すなと、宗教家の有馬頼底さん、作家の瀬戸内寂聴さん、ノーベル賞受賞者の益川敏英さんなど幅広い19氏が発起人になり「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」を立ち上げ、「全国統一署名」をよびかけました(別項)。今年5月をめどに3000万人の署名を集めることが目標です。市民アクションには、はじめて「九条の会」も共闘に加わり、保守層や宗教界などを含めた共同の輪が広がっています。

 安倍首相は昨年5月3日、「憲法9条に自衛隊の存在を書き込む」「2020年に新憲法施行をめざす」と述べ、改憲に意欲を示しています。戦後70年以上にわたって、日本が海外で戦争をしてこなかったのは、憲法9条が存在し、市民の粘り強い運動があったからです。秘密保護法、戦争法(安保法制)、共謀罪など、憲法と立憲主義を踏みにじってきた安倍政権のもとで9条を変えれば、日本がふたたび海外で「戦争する」国になってしまいます。

 「戦争はダメ」に保守も革新もありません。圧倒的多数の人の共通の願いです。「3000万人署名」は、その願いを署名のかたちで示そうという運動です。

なぜ「3000万人」?

改憲発議させない運動

 自民党はことしの国会で改憲案を発議し、一気に国民投票にまで持ち込もうとねらっています。「3000万人署名」はこの発議を許さないことを目標にしています。

 たしかに、国会内では、自民党・公明党と改憲推進派の議席は改憲発議に必要な3分の2を上回ります。しかし、9条改憲を許さない世論と運動が多数派になり、国民投票をしても敗北が必至という状況を作れば、いくら国会で多数派であってもこわくて発議できなくなります。

 先の総選挙での投票総数は5500万票台でした。3000万人はこの過半数です。いま、地域でも保守層も含めた署名推進の共同が広がりつつあります。全国の草の根から、この規模の多数派を「3000万人署名」を通じて作り上げましょう。

安倍9条改憲NO!全国市民アクション発起人(19氏)

 有馬頼底(臨済宗相国寺派管長)/内田樹(神戸女学院大学名誉教授)/梅原猛(哲学者)/落合恵子(作家)/鎌田慧(ルポライター)/鎌田實(諏訪中央病院名誉院長)/香山リカ(精神科医)/佐高信(ジャーナリスト)/澤地久枝(作家)/杉原泰雄(一橋大学名誉教授)/瀬戸内寂聴(小説家)/田中優子(法政大学教授)/田原総一朗(ジャーナリスト)/暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)/なかにし礼(作家・作詞家)/浜矩子(同志社大学教授)/樋口陽一(東北大学・東京大学名誉教授)/益川敏英(京都大学名誉教授)/森村誠一(作家)

Q 自衛隊を憲法に書き込めばどんなことがおこるの?

A 海外での武力行使に道

 安倍首相は、「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」(2017年11月21日の衆院本会議)といいますが、大きく変わります。結論からいうと、自衛隊を憲法に明記すれば、無制限の海外での武力行使に道を開くことになります。

 政府はこれまで、自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力組織」であって、憲法9条2項で禁止されている「戦力」にはあたらないと主張してきました。これ自体ごまかしですが、政府はこの立場から、自衛隊ができないこととして、(1)海外への自衛隊の派兵、(2)他国のために武力を行使する集団的自衛権の行使、(3)武力行使を目的とした国連軍への参加―の三つの活動をあげてきました。

 ところが、安倍政権は、2014年にそれまでの政府見解を変えて、政権の解釈しだいで集団的自衛権を行使できるという閣議決定を行い、これを2015年の安保法制で法律化しました。しかし、それでも安倍首相はイラク戦争やアフガン戦争のような場合に「武力行使を目的として戦闘に参加することは決してない」「限定的です」と繰り返さざるを得ませんでした。9条2項が、安保法制も縛っているからです。

 憲法に自衛隊を明記すれば、9条2項の「戦力の不保持」と矛盾します。その場合、「後からつくった法律は前の法律に優先する」という法律の世界の一般原則によって、9条2項が空文化してしまいます。自衛隊は、9条2項の縛りから解放されて、無制限な海外での武力行使に道が開かれます。

どのようなスケジュールで改憲しようとしているの?

 自民党の二階俊博幹事長は、年内にも憲法改正の発議をめざす考えを示しました。来年2019年は、4月には統一地方選挙と天皇の退位、5月新天皇即位、7月参院選と、重要な日程がつづきます。そのため、政府内には、早ければ通常国会(6月20日まで)、おそくとも秋の臨時国会で改憲を発議し、国民投票運動期間(60日〜180日)を経て、来年3月までの国民投票に持ち込もうとしています。

Q 民主主義や国民の暮らしや 経済への影響は?

A 人権を制限 社会保障も削減

 9条2項を空文化して制限のない海外での武力行使が可能になれば、国民の権利が脅かされ、国民生活は劇的に変化します。

 9条に自衛隊を書き込むというシナリオを書いた改憲右翼団体「日本会議」のブレーンは、「『国家の安全』は今後はどんな場合においても、憲法という『錦の御旗』を背景にすることとなる」(伊藤哲夫氏『明日への選択』2017年11月号)とし、「他の憲法上の権利や主張にも互角に対抗できる」と強調しています。すなわち、国民の基本的権利や憲法にもとづく主張・行動にも憲法上明記された自衛隊の名で制限が可能となるということです。さらに、自民党が年末にまとめた「論点整理」には、9条改憲とあわせて「緊急事態条項」の創設もあげられています。そのなかで、「政府への権限集中や私権制限を含めた緊急事態条項を憲法に規定すべき」との意見が紹介されています。すでに、秘密保護法で国民の知る権利を奪い、共謀罪で国民監視の強化が図られています。自衛隊を憲法に書き込めば、「国家の安全」の名で国民の基本的人権さえもないがしろにされることは明らかです。

 憲法9条に焦点をあてて改憲をめざす安倍政権のもとで、軍事費の膨張が鮮明になっています。2018年度も、過去最大の軍拡予算を組みました。「海外で戦争する国」づくりを予算の面から推進するものです。

 そのしわ寄せは、国民の暮らしに押し付けられています。医療や介護など社会保障予算の自然増さえ大幅に削減し、生活保護費の削減が進められています。

 戦後日本は、軍事費を抑制することで、民生分野を中心とする経済成長を促し、国民生活を向上させる力となってきました。自衛隊を憲法に書き込めば、軍拡に憲法上の根拠を与え、国民生活にも経済にも重大な影響を及ぼします。

イギリス下院EU離脱委員会委員長のヒラリー・ベン氏の質問

 衆院憲法審査会は2017年7月、各国の憲法・国民投票制度の調査を行うために、欧州を訪問。その際、イギリスのヒラリー・ベン下院EU離脱委員会委員長は次のようにのべました。

 「憲法に明記されていなくても、今まで自衛隊が活動できたのであれば、自衛隊が憲法に明記されていないということは、それほど大きな問題ではないように私には見受けられる」

Q 「ありがとう自衛隊」というチラシをもらいました

A 隊員の命を危険に陥れる

 改憲右翼団体「日本会議」が行っているキャンペーンです。チラシには「美しい日本の憲法をつくる国民の会」という名称がありますが、同会の共同代表の三好達、田久保忠衛両氏は、日本会議の名誉会長、現会長であり、「会」の事務局は日本会議が務めています。

 チラシでは「私たちの平和と暮らしを守るため。今ほど自衛隊の力が必要とされているときはありません」とし、「自衛隊への感謝の気持ちを込めて自衛隊を憲法に明記しましょう」と述べています。

 しかし、国民が感謝する自衛隊とは、災害救助に活躍し、万が一国土が攻撃されたときに国民を守る自衛隊です。自衛隊が憲法に書き込まれれば、自衛隊は海外でアメリカ軍とともに戦争する組織に変貌(へんぼう)します。

 日本の防衛とは無関係な海外での戦争に自衛隊を駆り立てることになるのです。自衛隊の憲法明記は、自衛隊への「感謝」どころか、隊員の命を危険に陥れるものです。アメリカは日本にも「血を流せ」と迫ってきました。安倍晋三首相は「軍事同盟とは血の同盟です」と述べ、集団的自衛権行使の実現に執念を燃やしてきました。

 自衛隊員の家族のなかにも「海外で戦死させたくない」と憲法への自衛隊明記に心配する人は少なくありません。「ありがとう自衛隊」の思いは、9条を守ってこそ実現できます。

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(写真)日本会議20周年記念集会でのかちどき=2017年11月27日

シナリオは「日本会議」発

 自衛隊を憲法に書き込んで9条2項を空文化させる策略は「日本会議」発のものです。安倍首相の盟友の一人で、日本会議・政策委員の伊藤哲夫氏が代表を務める日本政策研究センターの機関誌『明日への選択』(2016年11月号)では、「速やかに九条二項を削除するか、あるいは自衛隊を明記した三項を加えて二項を空文化させるべきである」と主張していました。昨年10月末、日本会議国会議員懇談会会長の古屋圭司衆院議員は「国民の会」の集会で、「5月3日の安倍首相提案は、日本会議議連で検討してきたもので、突然出てきたものではない」と話しています。

Q 「北朝鮮の核・ミサイル開発が心配だ」と言われました

A 軍事的緊張を激化させる

 国民の心配は当然のことです。北朝鮮の核・ミサイル開発、実験は絶対に許せません。

 同時に、朝鮮半島、日本をはじめ北東アジアに大惨害をもたらす米朝による軍事衝突、核戦争は、絶対に起こしてはなりません。

 重要なことは、北朝鮮問題への対応にとって、自衛隊の憲法明記は有害で危険だということです。自衛隊の明記で、自衛隊は米国と海外で無制限に戦争協力する軍隊になります。大軍拡にもつながり、北東アジアの軍事的緊張を一層激化させる悪循環をもたらし、軍事衝突の危険を高めます。

 実際、安倍首相は、軍事攻撃の選択肢を否定しないトランプ米大統領と「100%ともにある」と繰り返し、対話を否定し続けています。北朝鮮への威嚇となる日米共同演習が日本海などで繰り返され、戦争法に基づく米艦防護が発動されています。いったん米朝間で軍事衝突が起きれば、日本が自動的に戦争に参加することになります。

 また政府は、「北朝鮮の脅威」を口実に、空母「いずも」の攻撃型への改造、巡航ミサイルの導入など、危険な攻撃型軍備の増強を進めています。トランプ大統領に導入を求められ、予算案に計上されているイージス・アショア(陸上配備ミサイル防衛)は、アメリカに向かうミサイルを迎撃するためのもので、集団的自衛権行使の装備です。

 自衛隊が憲法に明記されれば、日米の軍事的一体化をさらに強め、緊張は高まり、日本が攻撃目標にされる危険も高まります。

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(写真)3000万署名に取り組む「東園田の会」=2017年12月19日、兵庫県尼崎市園田駅前

 いま必要なことは、危機をコントロールするための米朝間の無条件対話を緊急に行うことです。その中で、相互に先制攻撃を行わない、米側は軍事演習を暫定的に制限・中止する、北朝鮮は核・ミサイル実験、挑発行動を中止するなどの交渉、話し合いを行い、安定化を進めることです。同時に、こういう危機があるからこそ、核兵器禁止条約がいよいよ重要です。核兵器を違法化し、「悪の烙印(らくいん)」をおすことが、北朝鮮に核兵器開発の放棄を迫る国際的な力になることは間違いありません。

Q 「9条って何ですか?」と聞かれました

A 「二度と戦争はしない」 世界への誓い

 日本は15年にわたる侵略戦争を行い、アジア・太平洋諸国で2000万人以上、日本国民で310万人以上の犠牲をうむなど、大変な惨害をもたらしました。また、広島、長崎で原爆の被害をうけ、唯一の戦争被爆国となりました。

 こうした戦争への痛苦の反省から「二度と戦争はしない」という決意をこめて、憲法に9条、すなわち「戦争放棄」と「戦力不保持」が刻まれました。外国との紛争を武力でなく平和外交で解決するという全世界への誓いであり、日本政府がまもるべき原則です。

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(写真)全国市民アクション発足集会に集まった人たち=2017年9月8日、東京都中野区

 この9条があるからこそ、戦後70年間、日本が戦争に参加することはありませんでした。自衛隊も、1954年の発足以降、海外で人を殺したり、殺されたりしたことは一度もありません。また、9条のおかげで軍事予算の巨大化が抑えられ、戦後の経済発展を成し遂げることができました。学術・文化では、戦前のような軍事優先と決別し、科学と文化が、わが国の平和的復興と人類の福祉増進のために貢献する基礎となりました。まさに9条は、日本が平和国家として発展、繁栄してきた礎であり、世界に誇るべき宝です。

 世界では、東南アジアや中南米などで、あらゆる紛争を平和的に解決する地域的な共同体が発展し、国連では122カ国の賛成で核兵器禁止条約が採択されました。こうした流れは、9条のめざす理想に合致したものです。いま必要なことは、9条を変えるのではなく、9条をいかした外交を展開することです。

日本国憲法第9条

 (1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 (2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

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Q 国民は9条改憲を望んでいる?

A 過半数が「必要ない」と回答

 先の総選挙で自民党が多数の議席をえたことから、安倍首相は9条改憲の国会発議に意欲をみせています。しかし、9条改憲は民意ではありません。新聞やテレビのどの世論調査でも、国民が国政に望むものは憲法改正ではなく、改憲を「急ぐ必要はない」という回答が多数を占めています。総選挙で9条改憲が争点になったわけでもなく、自民党に投票したことが9条改憲を支持したことにはなりません。

 NHKが昨年3月に行った世論調査では、国政に望むものは「社会保障」や「景気・雇用」が圧倒的に多く、憲法改正は6%で九つの選択肢のなかで最も低いものです。憲法9条の改正については、「必要ない」と答えた人は57%で、「必要」と答えた人の倍以上になります。とくに、若い世代では「必要ない」という回答が全世代中で最も高くなっています(18歳〜29歳の男性で66%、女性で62%)。

 そもそも憲法とは、主権者である国民が権力者をしばるためのものであり、憲法99条は国務大臣などに「憲法を尊重し擁護する義務」を課しています。行政府の長である安倍首相が、昨年5月3日の改憲派の集会などで「期限を区切って9条を改正する」ことを表明し、国会に憲法「改正」を議論させようとしているのは、99条に違反するものです。憲法にもとづいて政治を行うという立憲主義を壊してしまいます。

 国民が望んでいない9条改憲を、憲法で縛られるべき安倍首相が、自らの思惑によって推進することは許されません。


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