2018年1月23日(火)
主張
安倍首相施政方針
一極支配への批判に答えない
政権復帰から6年目に入った安倍晋三首相の施政方針演説を聞きました。昨年の通常国会でも総選挙後の特別国会でも解明されなかった「森友」疑惑や「加計」疑惑、新たに浮上したスーパーコンピューターの開発補助金をめぐる疑惑などについての説明は全くありません。「働き方改革」や「人づくり革命」「生産性革命」などの言葉を乱発しますが、中身は残業代ゼロ法案や来年10月からの消費税増税の強行、大企業に対する減税です。「アメリカ第一」で沖縄には米軍の新基地建設を押しつけ、憲法改悪の加速も企てます。国民の批判に答える姿勢は全くありません。
政策も人柄も信用できぬ
「首相が信頼できない」44%(「読売」15日付)、同41・7%(共同通信、15日付各紙)―など、6年目に入っても安倍首相に対する国民の目は厳しいままです。昨年「森友」疑惑や「加計」疑惑を機に大きく低下した内閣支持率はその後上下していますが、最近の世論調査では安倍政権の政策だけでなく、首相の人柄にも厳しい批判が渦巻いているのが特徴です。
政権復帰以来、秘密保護法や安保法制=戦争法の強行、「共謀罪」法の制定など憲法破壊の政治を繰り返し、ついには憲法9条に自衛隊を書き込む明文改憲の策動にまで踏み込む一方、首相自らや妻の昭恵氏、「腹心の友」だという加計孝太郎「加計」理事長などが関わった疑惑にはまともに答えません。当然の世論調査結果です。
国有地を破格の安値で払い下げた「森友」疑惑や獣医学部開設に便宜を図ったと疑われる「加計」疑惑だけでなく、巨額の補助金を詐取した疑いのスパコン疑惑やリニア新幹線をめぐる談合でも、首相に近い人脈の関係が取りざたされます。昭恵氏や加計理事長などの国会喚問を含め、疑惑を徹底解明することは不可欠です。
首相の演説は「改革」や「革命」を乱発する一方、政権復帰以来目玉にしてきた「アベノミクス」の言葉は1回しか登場しません。大企業がもうかれば国民が潤うという欺瞞(ぎまん)の破綻は明らかです。大企業や大資産家が利益をため込む一方、国民の間では貧困と格差が広がっているのに、首相が演説で「格差の固定化はあってはならない」「貧困の連鎖を断ち切らねばならない」などと主張するのは、まさに首相自身にはね返る批判です。「改革」や「革命」とごまかしても、大企業本位、国民犠牲の経済政策の本質は変わりません。
安保・外交でも、米国のトランプ大統領との親密さを誇示し、戦争法の下での米艦艇や航空機の「防護」を誇示するなど、軍事力と日米同盟の強化、沖縄への新基地押しつけ等々、国民の願いに反する「アメリカべったり」の態度は露骨です。安倍政権に政治を任せ続けることはできません。
改憲案の国会発議に執念
安倍首相は昨年、憲法9条に自衛隊を書き込む改憲案を持ち出し、総選挙でも公約、今年になってからもいよいよ「実行の1年」などと改憲案の国会発議に拍車をかけています。演説でも各党に「議論を深め、前に進めていくことを期待」と前のめりです。首相周辺から3月の党大会までに自民党案をまとめるとの発言も相次ぎます。
改憲めぐる正念場です。市民と野党の力で安倍改憲を阻止し、憲法を守り生かすことが重要です。