2018年1月21日(日)
主張
プルトニウム蓄積
破綻した核燃サイクル撤退を
ウランを燃料にする原子力発電所の使用済み核燃料を再処理し、原爆の材料にもなるプルトニウムを取り出して原発で再利用することを認めている日米の原子力協定が、7月以降も自動延長されることが16日確定しました。問題を大きくしたくなかった日米両国政府の意向が働いたのは明らかですが、日本はすでに危険なプルトニウムを国内外で約47トンも蓄積しており、「核燃料サイクル」と称して高速増殖炉などで利用する計画も進んでいません。原発の運転を停止し、「原発ゼロ」を実現するとともに、破綻した核燃料サイクル計画そのものから撤退すべきです。
再処理も利用も実現せず
原発はウランが核分裂する際に出す莫大(ばくだい)なエネルギーを制御棒などでコントロールしながら取り出し、発電に使う仕組みです。原発を運転すれば必ず、危険なプルトニウムなどを含む使用済み核燃料が生まれます。使用済み核燃料は原発の建屋内のプールなどにため込まれており、日本の原発は満杯に近い状態です。政府や電力業界は使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉などの燃料にする核燃料サイクル実現を目指してきました。
しかし再処理そのものが技術的に難しく、青森県六ケ所村に建設している再処理工場は運転開始が再三延期されています。これまではイギリスやフランスに委託してきましたが、プルトニウム拡散の危険などからそれも困難になっています。取り出したプルトニウムを再利用する計画も、電力業界が「夢の原子炉」と宣伝して福井県に建設していた高速増殖炉の「もんじゅ」は、事故やトラブル続きで実現の見通しがつかないまま、一昨年末廃炉が決まりました。
政府や電力業界が苦しまぎれで持ち出した、プルトニウムをウランと混ぜMOX(混合)燃料にして既存の原発で燃やす「プルサーマル発電」も、安全性に懸念が残ることなどから、現在運転されているのは福井県の関西電力高浜原発3、4号機だけです(四国電力伊方原発3号機はいったん運転したものの、裁判所の決定で運転差し止め)。大量のプルトニウム再利用のめどは全くたっていません。
最大の問題はプルトニウムが猛毒なうえ、原爆の材料にもなることです。核兵器の保有国を増やさないため、使用済み核燃料の再処理やプルトニウムの管理は国際的に厳しく規制されており、かつては日米間でも再処理に回すたびに同意が必要でした。1988年に日米原子力協定が結ばれて以降はそうした制約がなくなる一方、日本が大量のプルトニウムを持つことへの懸念はくすぶり続けています。日米の協定を7月以降延長しても、半年前の一方的通告で廃棄できることになっています。
見直しではなく断念こそ
日本政府はこれまで「利用目的のないプルトニウムは持たない」を原則にしてきました。ところが再利用計画が破綻していることから、政府の原子力委員会は15年ぶりに見直し、利用計画が立った分のみ再処理するなどと検討を開始しています。再処理しなくても使用済み核燃料がそのまま増えるだけでは、解決にはなりません。
原発再稼働は中止して「原発ゼロ」を実現、破綻した核燃料サイクルそのものを断念することが不可欠です。