2018年1月13日(土)
主張
「攻撃的兵器」導入
大軍拡加速へ異常な前のめり
長距離巡航ミサイル、戦闘機搭載空母、電子戦機…。「海外で戦争する国」づくりを進める安倍晋三政権の下で、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出などを口実に、他国を攻撃できる最新兵器を導入する動きが急速に強まっています。その前のめりぶりはあまりにも異常です。北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射、中国の東シナ海などでの力による現状変更を狙う動きは決して許されません。しかし、他国を攻撃可能な兵器の導入は、憲法9条に背いて米国の無法な先制攻撃への本格的な参戦を可能にし、地域の軍事緊張を一層激化させる危険な道です。
政府の憲法見解に反する
安倍政権は、日本の軍事力の在り方を定める「防衛計画の大綱」(大綱)を今年(2018年)末に改定しようとしています。現在の大綱は13年末、「おおむね10年程度の期間を念頭に置いたもの」として閣議決定されました。今年末に改定されれば、大幅な前倒しとなります。
安倍首相は昨年12月15日の講演で、北朝鮮の核・ミサイル問題などに触れて、年明けから大綱の見直し議論が本格化するとし、「従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていきたい」と述べました。今月4日の年頭記者会見ではさらに踏み込んで「従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力の強化に取り組んでいく」と表明しました。
安倍内閣が昨年12月22日に決定した18年度政府予算案の軍事費には、既に「従来の延長線上」ではない「防衛力の強化」を図るための最新兵器の導入が盛り込まれています。昨年8月末の防衛省の概算要求にも含まれていなかった長距離巡航ミサイルです。
18年度軍事予算案に取得費が計上された長距離巡航ミサイル(JSM)は、航空自衛隊が導入を進めるステルス戦闘機F35Aから発射します。射程は約500キロとされ、性能上は日本海上空から北朝鮮内陸部への攻撃が可能です。
重大なのは、大綱見直しの中で海上自衛隊最大のヘリコプター搭載空母「いずも」を改修し、空母艦載機として短距離離陸・垂直着陸ができるステルス戦闘機F35Bを導入する案が浮上していることです。敵のレーダー網を無力化する電子戦機(EA18Gなど)の導入案も取りざたされています。
「離島防衛」などを口実にしていますが、政府はこれまで「敵基地攻撃」に必要な兵器として巡航ミサイルやステルス戦闘機、電子戦機などを挙げてきました。「敵基地攻撃能力」の保有につながる兵器導入は「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは憲法の趣旨とするところではない」(1959年、伊能繁次郎防衛庁長官)としてきた政府自らの見解にも反します。
平和解決逆行の道阻止を
安倍首相の言う「従来の延長線上」ではない「防衛力の強化」とは、「国民を守る」どころか、集団的自衛権行使を可能にした安保法制=戦争法、さらには憲法9条改定策動の下、海外で米軍と肩を並べて戦争するための大軍拡であることは明白です。際限のない軍拡競争の悪循環を招き、「対話による平和的解決」に逆行する企てを許してはなりません。