2018年1月10日(水)
日大、大量雇い止め狙う
無期転換逃れ
授業削減で学ぶ権利侵害
日本大学が、今年4月から適用がはじまる改正労働契約法の5年無期転換ルールを逃れるために、非常勤講師の大量雇い止めを強行しようとしています。雇い止めによる講師不足を補うために、科目数・講座コマ数の2割減をすすめ、専任教員には担当責任コマ数の6割増を押し付け。学生の学びたい講座がなくなる、学ぶ権利が脅かされる事態が起ころうとしています。
|
文理学部(学生8600人)では、史学科で「西洋史文献研究」のドイツ語、フランス語の2講座を担当していた非常勤講師たちに、雇い止めが通告されました。通告文書には、同講座が全学ですすめるコマ数削減の対象になったことが説明されていました。
学びたいのに
同講座は、学生が1年生で学んだ初級文法を土台として、外国語文献を読む能力を養い、専門研究にすすむための重要な講座です。ドイツ語を担当している女性非常勤講師は、初回講義でナチス問題を取り上げ、学生の歴史への理解を深めています。
史学科の西洋史専任教員はアイルランド史とロシア史が専門のため、女性は、ドイツ史を卒業論文で取り上げたい学生へのアドバイスも行っていました。女性がいなくなれば、学生は欧州主要国であるドイツの歴史を学ぶことが困難になります。
首都圏大学非常勤講師組合に加入した女性は、雇い止め撤回に立ち上がりました。
日大は、改正労契法で有期契約労働者が5年雇用継続すると無期契約に転換されるルールの適用開始を前にして、非常勤講師を契約上限5年で雇い止めとする就業規則をつくっています。
日大は雇い止め制度の目的について、本紙の問い合わせに、雇い止め制度の目的が無期転換逃れであることは否定。「非常勤講師は、学生や社会のニーズを随時柔軟に反映できることを利点として活用されており、ある程度の期間で授業科目や人材が入れ替わることで、その利点を確保できる」などと回答しています。しかし、現実には非常勤講師の雇い止めで学生の学ぶ選択肢が奪われる事態が起こっています。
また日大は、「専任教員の授業持ちコマ数の適正化などを検討する際に、非常勤講師の契約期間に上限を設けないことは今後の大学運営に支障をきたす」と述べ、専任教員のコマ数増を非常勤講師雇い止めと関連づけて検討していることを明らかにしています。
組合加入相次ぐ
首都圏大学非常勤講師組合には、日大の非常勤講師の組合加入が相次いでいます。すでに20人以上が大学当局に名前を公表し、以下のような事例について雇い止め撤回などを求めて団体交渉を行っています。
▽新設の危機管理学部(1〜2年生680人)、スポーツ科学部(1〜2年生650人)で、文科省認可に反する英語担当非常勤講師16人全員雇い止め。
▽経済学部(学生6500人)で、教職課程「倫理学」担当の男性雇い止め。
▽文理学部の英語を2コマ教えていた外国人非常勤講師が、今年度は1コマに減らされ、来年度から0コマとなって雇い止め。
▽理工学部(学生1万人)で、「新カリキュラム導入」を理由として、フランス語の女性非常勤講師の担当コマ数を4コマから2コマに削減。別の女性も3コマから2コマに削減。
▽非常勤講師を一律70歳で雇い止めにする一方的な不利益変更。
日大は、学内の非常勤講師の人数について「回答を差し控える」としました。非常勤講師組合は、4000人は在籍していると推計します。
「これだけ大量の非常勤講師を一度に雇い止めにはできないと思っていたが、本当に可能な限りやろうとしている」と批判する今井拓副委員長(日大非常勤講師)。「日大は雇い止め理由をコマ数削減としていますが、専任教員にコマ数増を押し付けており、目的は非常勤講師の無期転換阻止にあります」と強調します。
非常勤講師組合は、学生の学ぶ権利と非常勤講師の生活を守るため、組合分会の日大ユニオン準備会をつくって非常勤講師の加入促進をはかっています。