2018年1月10日(水)
東京五輪パートナー 日航、問われる責任
解雇事件 ILOの監視受けたまま
組織委規定に労働者尊重
2020年東京五輪・パラリンピックのオフィシャルパートナーをつとめる日本航空が、五輪関連事業者に義務付けられた東京2020組織委員会の規定「持続可能性に配慮した調達コード」に責任ある行動をとれるか注目されています。調達コードは、国際労働機関(ILO)中核条約の順守を求めていますが、日航は解雇事件でILO勧告を受けたまま解決していません。(田代正則)
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東京2020組織委は昨年5月、ILOとパートナーシップ締結に合意しました。大会を通じて企業に対してディーセントワーク(働きがいのある人間らしい働き方)を広げることが目的です。ILOにとっても、個別の大会組織委とパートナーシップを結ぶのは初めてのことで、ガイ・ライダー事務局長が来日したほど力を入れています。
組織委はその前から「調達コード」にILO中核条約順守や長時間労働の禁止などを書き込み、準備を整えていました。「調達コード」は、違反行為には調査・改善を求め、順守しなければ契約解除もありうるとしています。
適用範囲は、下請けを含めた五輪事業受注企業、大会エンブレムを使用する企業、スポンサーとなった「パートナー企業」も含まれています。
日航は、大会スポンサー「オフィシャルパートナー」です。航空機に大会エンブレムを付けています。
日航は2010年末にパイロットと客室乗務員165人の解雇を強行。その過程で労働組合のストライキ権投票を妨害した不当労働行為の認定が、最高裁で確定しています。
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ILOは、中核条約の「結社の自由条約」「団体交渉促進条約」に基づいて設置した「結社の自由委員会」で、これまで3度も勧告を出し、解雇者の職場復帰に向けて労働組合と意義ある対話を行うよう求めています。しかし、いまだ解雇者が放置され、ILOからの監視が続いています。
これまで「調達コード」に違反した企業には批判が起き、改善が求められています。
電通は、五輪関連の広告契約の解除を恐れて違法残業の隠ぺいを図ったことが明らかとなり、刑事裁判で厳しく指弾されました。
五輪メイン会場の新国立競技場建設現場の過労自殺事件では、異例の早さで労災認定が行われ、労働基準監督署から雇用主に是正勧告、元請けの大成建設にも行政指導が行われました。
日航と同じくオフィシャルパートナーのヤマト運輸は、労基署から違法残業の是正勧告を受け、全社調査で230億円もの未払い賃金を支払っています。
日航には、大会オフィシャルパートナーとしてオリンピックの名を汚さない責任ある行動が求められています。