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2017年12月29日(金)

主張

タックスヘイブン

国境越えた税逃れに抜本策を

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 税逃れは、他国だけで起きているわけではありません。

 情報技術(IT)機器大手のアップルが日本での製品販売から得た利益をタックスヘイブン(租税回避地)に移すことで逃れた税金は、10年間で最大1兆2000億円を超えることを本紙が暴露しました。国内でアップル製品を愛用している人も多いことでしょう。日本で得た利益は、国境を越えてタックスヘイブンへ流れ、日本の税収が失われていたのです。

税損失5兆円との試算も

 アップルによる1兆円を超える税逃れといっても、あくまでも、一つの企業の分だけです。では一体、タックスヘイブンによって失われている日本の税収損失は、どのくらいになるのでしょう。ぜひとも知りたいところですが、巨額の税逃れがタックスヘイブンという秘密の領域で巧妙に行われているため、課税当局すら正確な金額をつかむことはできません。ただ、日本の経済規模から見て、年間数兆円の規模に達しているとみられています。税制や企業会計などの専門家が集まる国際NGOのタックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)は、日本からの税収損失が5兆円を超えるという試算を明らかにしています。

 政府の統計によれば、日本からタックスヘイブンの一つであるケイマン諸島への証券投資残高は2016年末で79・9兆円に達しています。

 内外の多国籍企業の税逃れの実態については、徹底した調査・究明が求められます。

 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は11月、「パラダイス文書」を暴露しました。英領バミューダ諸島に拠点を置く法律事務所などから流出した膨大な電子ファイルは、昨年発覚した「パナマ文書」を上回る1340万件という史上最大規模の情報リークです。多国籍企業と政治家、超富裕層たちがタックスヘイブンを利用している実態を暴き、再び世界に衝撃を与えています。

 タックスヘイブンの秘密主義は汚職や腐敗を助長します。多国籍企業と超富裕層の税逃れによる税源の浸食は、各国の所得の再分配機能を低下させ、貧困対策に打撃を与え、社会保障や教育などの行政を滞らせます。貧しい国々にはとりわけ大きな被害を与えます。

 「タックスヘイブンは、一部の富裕層や多国籍企業に間違いなく利益をもたらしていますが、この利益は他者の損失の上に成り立っており、格差と不平等を助長する大きな要因になっています」―。これは、トマ・ピケティ氏ら300人を超す経済学者たちから世界の首脳に向けられた言葉です。

格差拡大の増幅を許さず

 秘密の領域であるタックスヘイブンは、「格差増幅装置」です。国際協力団体オックスファムによると、世界の超富豪8人の持つ富が、世界人口の約半数の36億人が持つ富と等しくなっています。この格差拡大の中核に存在しているのがタックスヘイブンです。国際社会は、この極端に拡大した格差と共存することはできません。

 TJNは、「パラダイス文書」暴露に合わせ声明を発表しました。国連のもとで首脳会議を開催し、税逃れ根絶への対策を講じるよう呼びかけました。

 国際社会は協力体制を構築し、税逃れに立ち向かう時です。


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